第563回常任理事会/12月7日
通産省の今野秀洋 通商政策局長より、11月30日から12月3日にかけて米国シアトルで開催された第3回WTO閣僚会合の模様について説明をきいた。
閣僚宣言はとりまとめられず、新ラウンド立上げは凍結された。バシェフスキー議長は「加盟国拡大、アジェンダ増加によって議論のとりまとめが難しくなっており、WTOの意志決定プロセスを根本から見直す時間が必要」とその理由を説明した。
交渉の枠組み:
新ラウンド成功には、各国の関心事項をバランス良くとりあげる必要があるため、日本は包括交渉を強く主張し、多くの支持を得た。これに対し、米国は、ビルト・イン・アジェンダ(農業、サービス)や労働を重視する姿勢をとった。また、インドなど少数の国は新ラウンドの立上げそのものに反対した。その対立が最後まで解けなかった。
農業:
最も多くの時間とエネルギーが割かれた。日本、EU、韓国、ノルウェー、スイスと米国、ケアンズグループががっぷり四つに組み、互いに譲らなかった。EUは輸出補助金撤廃に強硬に反対した。
労働:
会合がまとまらなかった最大の原因がこれに関する意見対立である。米国が、コア労働基準(児童労働の禁止等)を議論する場の設置を求めたのに対し、途上国は、低賃金を理由に途上国を市場から締め出そうとする保護主義的提案だとして反発した。
アンチダンピング:
日本が強く主張した論点である。現状を放置すると世界で提訴合戦が起こることさえ懸念される。分科会議長報告は、米国に対し柔軟な姿勢を求めたが、米国は頑として受入れなかった。
宣言のとりまとめに至らなかったのは残念である。米国は、議長国でありながら、終始頑なな姿勢を崩さなかった。日本は、三大臣が参加し、連携を密にした結果、農業でも孤立せず、また、アンチダンピングについても日本の考え方に幅広い支持を集めることができた。
農業、サービスの交渉は開始されるものの、その枠組みやスケジュールは決まっておらず、実質的進展は難しい情勢である。米国の姿勢は、国内事情から容易には変わりそうにないが、日米間で建設的なアジェンダを設定し、摩擦が生じないようにしたい。経済界においても、包括的な新ラウンドの立上げに向け、日米財界人会議、日・EUビジネス・ダイアログ・ラウンドテーブル、サービス貿易自由化協議会等の対話チャネルを活用して各国との連携を密にしていただきたい。