経団連くりっぷ No.115 (1999年12月22日)

経団連訪欧ミッション(団長 今井 敬会長)/11月7日〜17日

日本と欧州の新たなパートナーシップ構築


さる11月7日から17日にかけて、今井会長を団長とする訪欧ミッションがベルギー、フランス、英国、ドイツの4ヵ国を訪問した。単一通貨ユーロの影響、EU拡大、WTO交渉などを巡って各国首脳や経済界と精力的に意見交換を行ない、日本と欧州はこれまで以上に協力関係を強化し、協調していかなければいけないとの意見で一致を見た。

  1. ミッション総括
  2. 今次訪欧ミッションには、今井会長のほか、熊谷・辻・大賀副会長、橋本・森川評議員会副議長および関澤ヨーロッパ地域委員長が団員として参加し、導入後約10ヶ月が経過したユーロの感触を直接確認するとともに、WTO交渉を含めた今後の更なる日欧関係強化の構築を主な目的とした。
    日欧関係は良好であり、また関心事項に共通する部分が多かったため、ミッション全体を通じて、首脳や産業界との議論は極めて友好的に行なわれた。
    欧州全体でユーロに対する評価は高く、後戻りすることはない。EUでは現在、拡大のための動きが活発であり、すべての候補国の加盟が実現すれば27カ国になる。日本経済界にとってこの大欧州市場がこれまで以上に重要なマーケットになることは間違いない。
    ただし、統一市場の中で税制のハーモナイゼーションや将来のEU拡大に向けた機構改革など、克服すべき問題も依然として少なくない。
    また各国においても、フランスの週35時間労働制、英国のポンド高およびユーロ参加、またドイツの法人税減税など日本企業と関わりが深い課題も多く、日欧関係をますます円滑に進めるためには欧州の動きに目が離せない。

  3. 懇談要旨
    1. プロディ欧州委員長、リーカネン欧州委員(11月8日)
      世界貿易において日米欧は責任ある対応をすべきであり、特に日欧は立場が近いことから共同歩調をとるべきである。
      また電子商取引などについては、政府が十分な枠組みを示し、そのなかで企業が自由に活動できるチャンスを与えることが必要である。

    2. フェルホフスタット・ベルギー首相(11月8日)
      ベルギーは北部と南部で環境が大きく異なるが、南部の環境整備も進んでおり、引き続き日本からの投資を希望する。ダイオキシン問題もほぼ解決した。

    3. 欧州産業連盟(UNICE)(11月9日)
      これからの欧州経済は順調に推移していくだろう。ユーロ導入後、欧州中央銀行もうまく機能しており、今後のEU深化・拡大について種々の課題をクリアにしていきながら進めていきたい。

    4. シラク仏大統領(11月9日)
      日本経済の回復は前々から信じていた。日仏関係は政治面のみならず経済や文化の面でも良好である。ただ、お互いの貿易交流はまだ不十分だろう。

    5. 仏産業連盟(MEDEF)(11月10日)
      フランス経済は、ユーロ導入や構造改革のなかで、内需や企業の設備投資も伸びて成長率が3%となり好調である。ただ、不安材料として週35時間労働制があり、これは今後の成長に暗雲を投げかけるかもしれない。

    6. ジョスパン仏首相(11月10日)
      日本経済の中で金融危機については大きな関心がある。日本とフランスは政治・外交面で友好関係にあり、その関係はますます近づいている。12月の訪日時に週35時間労働制についても考えを報告したい。

    7. ブレア英首相(11月11日)
      英国でのユーロ導入についての考えは、これまで通り一定の経済条件達成が条件であることに変化ない。ポンド高についても経済安定のためには取組みが必要である。JAPAN2001に対して英国政府は全面的に協力する。

    8. バイヤース英貿易産業相(11月11日)
      ポンド高により輸出業界が苦労しているのは十分承知しているが、短期的な観点から人為的に為替操作するのは好ましくない。貿易の更なる自由化のためWTO交渉成功に向けて最大限の努力を行なう。

    9. 英産業連盟(CBI)(11月12日)
      英国経済は若干の成長率ダウンが見られるものの、失業率の低下や市場の柔軟性などから、悲観的になることはない。ユーロについて産業界は前向きだが、保守党との調整も必要である。

    10. エディ・ジョージ・イングランド銀行総裁(11月12日)
      英国の金融政策では、イングランド銀行と政治が共同歩調を取っており、インフレ率については政府が設定した目標が達成されるようにイングランド銀行が努力する役割を負う。

    11. 独産業連盟とのシンポジウム(11月15日)
      −グローバル化は危機か機会か

      今はインターネットなどにより中小企業も一夜にしてグローバル化できる時代であり、グローバリゼーションは避けることができない流れである。ただしグローバルスタンダードを重視するあまり、元来持つ強みを失うことがないように注意すべきである。
      また日本市場は現在開かれたマーケットになっており、成功するかどうかはドイツ企業の努力如何である。

    12. シュレーダー独首相(11月15日)
      旧東独は生産性が大きく向上したが、東西の経済格差解消まではまだ時間がかかるだろう。税制について、法人税は2001年から35%に下げるが、インフラ充実の観点から所得税を下げることはできない。ただドイツは社会の安定性が高い。


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