経団連くりっぷ No.115 (1999年12月22日)

国際協力委員会 政策部会(部会長 佐藤和夫氏)/12月10日

わが国民間経済界との協力関係を模索するIFC

−カッスム副総裁との懇談会を開催


経団連では、1995年以来、国際金融公社(IFC)はじめ世銀グループとの交流強化に務めてきている。今般、カッスムIFC副総裁の来日を機に同氏を招き、アジア危機への対応、日本企業との協力のあり方、世銀グループのリストラを含む幅広いテーマにて意見交換を行なった。

カッスム副総裁発言要旨

  1. アジア危機への対応
  2. アジア危機の原因は資金流動性の不足であり、IFCが展開する新規投資事業では、これらを直接救済することができない。そこでIFCは、金融や一般製造業のリストラを助言し、しかるのち、直接出資を行うことによって、債務削減や債務内容の改善にも協力している。
    具体的には、韓国における貿易金融の提供。アジア・オポチュニティ・ファンドの創設を通じたタイ、韓国、インドネシア等における企業リストラへの協力。タイに特化した新たなファンドへの取組み。日本政府の資金的な支援を受けて、インドネシアで成長セクターの特定とリストラ対象企業の選定、等の事業を行なっている。これら事業に対して日本企業からも多数の案件が持ち込まれている。

  3. インドネシアの現状
  4. 危機にみまわれたアジア諸国の中では、韓国やタイが急速に経済を改善しつつある。他方、インドネシアは大統領選挙等の結果により、政情は全般的に大幅に改善しつつあるものの、経済はいまだ不透明だといえる。一般に、経済は来年度以降にプラス成長に戻ると予想されてはいるが、アチェを巡る問題など全般的な政治情勢、発電事業関連の制度上の問題、そして民間企業のリストラに関連した問題は残る。とくにアジア危機を契機に、問題の解決が先送りされている。
    このような状況にあって、IFCとしては、インドネシアでは特に中堅かつ将来性のある堅実な企業のリストラに手を貸していく。

  5. 世銀グループのリストラ
  6. 昨年末、IFCのヴォイケ長官が世銀の専務理事に就任するまで、世銀とIFCは民間部門の事業を異なる組織で遂行してきたが、今般、これがはじめて統合されることとなった。とりあえずは情報通信、鉱業、石油・ガス・石油化学に関する助言業務についての事業を一つの組織の下で行なう予定である。たとえば世銀の提言とIFCの具体的な投資事業が統括され、政策提言がより現実的なものとなる。
    これまでIFCは、ハイテク分野の支援は行なってこなかった。しかし21世紀は情報通信の時代であり、情報通信インフラの開発に対する途上国のニーズは高いことに鑑み、ハイテク分野を間接的に支援していく。環境分野にも力を入れたい。


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