経団連くりっぷ No.115 (1999年12月22日)

OECD地域開発政策委員会一行との懇談会
(司会 原 隆之OECD地域開発政策委員会副議長・三菱地所専務取締役)/11月30日

大きすぎる時間コストは都市の国際競争力を阻害する


OECD(経済協力開発機構)では、11月23日から12月2日までの間、都市問題の専門家と事務局幹部を日本に派遣し、国際的視点から日本の都市政策を評価するとともに、都市づくりの今後のあり方を考えるため、東京都、神戸市、松江市において「都市政策セミナー99」と題するシンポジウム、視察会を行なった。経団連に対しても意見交換したいとの申し入れがあったことから、11月30日にOECD地域開発政策委員会一行との懇談会を開催し、経団連側から『都市再生への提言』について説明するとともに、日本の都市政策の課題について意見交換を行なった。

  1. OECDコンビッツ地域開発政策部長挨拶
  2. 現在、OECDの国々は都市について、3つの課題を抱えている。第1に質の高いプロジェクトが乏しいことであり、第2に都市のスプロール現象である。これを解決するためには、環境問題や社会問題に対する施策と連動した一貫した強い都市政策が必要である。第3に都市再生のための戦略づくりであり、官、民、地域住民が一体となった施策を展開することが必要である。

  3. 意見交換(要旨)
  4. 日本側からは冒頭、田中順一郎国土・住宅政策委員会共同委員長が「東京の魅力の向上が日本の競争力の向上につながる。東京の魅力向上のためには都心居住や美しい街並みづくりを進めるための規制改革、土地保有課税改革を通じた投資の誘導、道路インフラの整備等が必要である」と訴えた。
    その後、三井不動産の林常務から「良好な都市開発には適切な官民連携が必要」、森ビルの山本専務から「面的開発が重要」、東急不動産の土橋常務から「地価の下落局面で郊外の大規模開発は難しい」と都市開発の現状を説明した。新日鐵の小野常務は「暫定利用をしやすい仕組みを」、イトーヨーカ堂の島村総括マネージャーは「大型店も中心市街地の活性化に取り組んでいる」、フジタの川俣専務は「私権と公共とのバランスが課題だ」と指摘した。また各メンバーとも、都市開発に時間がかかりすぎることを、実例を示して訴え、原副議長が「民主主義には時間がかかるが、ビジネスにとって時は金なりである」とまとめた。
    日本側の説明を受けて、キャンベラ大学都市開発センターのニールスン所長は「都市の国際競争力を維持、向上するためには開発にかかる時間を短縮することが不可欠。時間コストの増嵩が開発コストを押し上げ、東京でのビジネスコストを押し上げる。政府系の機関が用地をまとめて買い上げ、民間に売却するなどの対策が考えられないか」と提案し、リバプール・ジョン・ムーア大学ヨーロッパ都市問題研究所のパーキンソン所長は「規制の緩和と強化、官と民とのバランスをどうとるのかという哲学的な課題を克服することが必要」とコメントした。


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