国土・住宅政策委員会 地方振興部会(部会長 阿比留雄氏)/12月8日〜9日
地方振興部会では、新しい全国総合開発計画において美しい国土の形成や多様な地域文化の創出のための有効な方策と位置付けられている「観光」に着目し、各地の現状視察等を通じて、観光が地域活性化に果たす役割や諸課題について検討を行なっている。今回は、地方視察の第一回目として九州を訪問し、博多、由布院、安心院において地域の特色を生かしたまちづくりをつぶさに視察するとともに、地元関係者と懇談会を行なった。
北海道、東北、沖縄の旅行客数が伸びているのに対して、九州のそれは減少するなど、最近の九州観光をめぐる状況は厳しい。こうした低迷の要因としては、北海道や沖縄と異なり、九州各県がばらばらに観光に取り組み、「九州」として統一的なイメージを構築できていないことが挙げられる。
また、観光統計に関して調査基準・手法が異なるため、各県の比較が困難であるという問題もある。観光産業の経済波及効果を算出する上からも、「観光関連指標」等の観光統計の整備が急がれる。
21世紀には、九州沖縄サミット、ワールドカップ・サッカー大会等のイベントを契機とした大観光交流時代を迎えるが、特にアジア諸国からの観光客誘致を推進することが九州の産業振興の上からも重要である。
今後は、言語、標識、情報受発信機能等の諸課題に取り組むとともに、行政とタイアップしながら、広域的に観光戦略を展開していかなければならない。
由布院においては、まちを紹介して「どうです、良いところでしょう」と自慢することからまちづくりが始まった。安易に商業主義的な観光地をつくるのではなく、まず自分たちが住み易く、訪れる人に対して誇れるようなまちづくりをすることが、結果的に地域の振興につながった。
また、宿泊客だけでなく一般の昼間の観光客に対しても旅館を開放したことでまちへの来訪者が増加し、店も積極的に進出するようになった。商店の売上げに占める泊まり客の割合は1/4に過ぎず、残りは「ぶらぶら型観光」である。こうした開放的なまちの雰囲気も、他の温泉地にはない魅力として旅行者に受け入れられていると思う。
由布院のまちづくりは30年以上前から、観光協会や観光総合事務所など、民間主体で進められており、女性や若者が大きな勢力を形成している。こうした団体は、単に観光ばかりでなく交通・教育・環境・福祉等、さまざまな問題を取り扱っており、真の意味でのまちづくりに参画している。
安心院は由布院の真北20kmに位置するが、元来温泉が出る地域ではなかった。昔は畜産と米穀が主要農産物であったが、今では、西日本最大規模を誇る500haのぶどう生産が主産品になっている。
農村滞在型余暇活動、いわゆるグリーンツーリズム(以下、GT)は、1995年にグリーンツーリズム促進法が施行されて以来台頭してきた考え方であり、安心院では村おこしと一村一品運動が合流したことによって、1996年にGT研究会が発足し、具体的な活動を開始するようになった。
自然環境を保全しながら、都市と農村をいかに結びつけるかというテーマのもと、安心院では、名産であるぶどう農家に都会からやってきた人を廉価で泊める農村民泊を通じて、自家製の野菜、米、鶏、卵等でもてなすという独自の形態をとっている。
都市と農村の人的交流、山村地域の活性化、子どもの教育問題等、さまざまな側面から重要なGTは、農業衰退が著しいわが国において、21世紀の農業問題を考える重要なヒントを与えるものである。