経団連くりっぷ No.115 (1999年12月22日)

経済政策委員会 企画部会(部会長 小井戸雅彦氏)/11月25日

情報化・電子商取引の進展と雇用への影響


経済政策委員会 企画部会では、21世紀初頭に予測される労働力人口の減少の下で、経済社会の活力を維持していく方策について検討を進めている。この一環として、通商産業省機械情報産業局の安延 申 電子政策課長から情報化・電子商取引の進展と雇用への影響につき、説明をきくとともに懇談した。

  1. 安延課長説明要旨
    1. 情報化と電子商取引市場
    2. 1980年代後半以降、米国における設備投資に占める情報化投資の比率は急増しており、1998年では日本と比較して15%ポイント上回っている。
      通産省は、両国経済のパフォーマンスの差が情報通信の活用に起因するとの認識に立ち、ユーザの情報化推進に重点を置いた施策を展開している。
      電子商取引については、企業間取引は自動車関連、電子・情報関連分野で米国並みに活発である。一方、企業・消費者間取引については日本市場(1998年650億円)は米国市場(同2兆2,500億円)に比べ小規模であるが、2003年までには、自動車、旅行、金融取引等の市場が拡大しその差は縮小していくと見込まれる。

    3. 情報化の進展と雇用の見通し
    4. 実質成長率1%を前提にした推計によると、情報化の影響を除くと1999年から2004年の間に、成熟産業の衰退とリストラによる過剰雇用の削減で191万人の雇用減、新産業の成長により118万人の雇用増があり、差引き73万人の雇用減が見込まれる。
      一方、情報化の影響を見ると、同じ期間に企業内の業務プロセスの省力化や流通・物流の合理化等により163万人の雇用が削減されるが、情報通信産業と情報通信活用型新製品・サービス産業の拡大、及び電子商取引の普及により249万人の雇用が創出され、86万人の雇用の純増が見込まれる。
      したがって、短期的には雇用がマイナスとなることは避けられないとしても、長期的には日本経済全体で13万人の雇用純増が期待できる。

  2. 質疑応答(要旨)
  3. 当会側出席者から「2005年以降の労働力人口不足にどう対応すべきか」、「情報化推進施策はいかに展開すべきか」との質問に対し、安延課長からは「女性労働力の活用等で量的には心配ないと思うが、労働力の質が懸念される。情報化を支える人材育成に向けた高等教育の充実が課題である」、「個人的見解であるが、財政金融面の支援措置よりも、むしろ規制緩和等、民間主導の情報化の環境整備が重要と考える」との回答があった。


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