経団連くりっぷ No.115 (1999年12月22日)

情報通信ワーキング・グループ第8回、10回会合(座長 立花 宏常務理事)/11月18日・26日

線路敷設円滑化のための法が必要か


情報通信ビジネスの発展のためには、通信事業者が柔軟にネットワークを構築できるような環境整備を図る必要がある。そこで、情報通信ワーキング・グループでは、11月18日・26日の2回にわけて、関係する6企業から線路敷設権に対する考え方等について説明をきくとともに懇談した。

説明要旨

  1. 東日本電信電話
  2. NTTが所有するすべての管路・とう道の内、相互接続に必要不可欠な設備であり、他事業者が自ら設置することが困難な区間は「義務的提供区間」としてとらえ、接続を希望するすべての事業者に義務として提供している。提供条件・料金は接続約款に記載されており、郵政省の認可を受けている。それ以外の区間である「一般的提供区間」は、法令等の義務はなく、私的自治の原則に委ねられる問題であるが、使用予定のないものについては、内外無差別に提供している。利用手順・基本契約については、ガイドブックの刊行・インターネット上での公開とともに、総合窓口会社を設立して対応している。
    一般提供区間における管路等の提供を公共空間の有効活用の観点から議論するのであれば、管路等の地中設備を保有する企業全体の課題としてとらえるべきであり、幅広い議論が必要である。

  3. 東日本旅客鉄道
  4. JR東日本では、通信事業者から鉄道用地内へのケーブル敷設要請に対し、敷設可能な場合には対応している。日本テレコム、グローバル・アクセスの2社に対して、約3,000kmの管路貸しを行なうとともに、各移動体事業者に対しても約1,350の無線基地局を提供している。手続・管路使用料等はホームページ等で公表していないが、社内においてはルールを定めており、通信事業者の申請に対して、30日以内で回答している。
    鉄道内でのケーブル敷設は作業に危険を伴うことから全てJRが受託している。また、工事作業員が列車に接触して死亡する事故後、作業体制を厳格化したため、作業できる時間が大幅に少なくなった。さらに、列車運行の安全性確保、混雑緩和等のため、年間計画に基づいて設備の変更を行なっている。通信事業者からの突発的な受託工事を行なう余裕はない。通信事業者には、

    1. 管路の収容に余裕がある、
    2. 余裕がない場合、完成時期は希望に沿えない、
    3. 施行区間変更がありうる、
    ことを了承してもらった上で敷設してもらうこととしている。

  5. 第二電電
  6. ローカルコストを下げるためには、競争の促進、とりわけ地域通信分野における競争の促進が必要である。競争を促進するためには、既存インフラ(公共空間)である電柱・管路等を有効活用し、安価なコストで回線を敷設できるような環境整備を図る必要があり、その意味で線路敷設権を設定する必要がある。
    既存インフラを活用する場合、料金などが民同士の交渉で決定されるため、料金設定の妥当性などに問題がある。今後は、(1)事業者間での公正性の確保、(2)義務、適切な料金設定、手続の透明性・迅速性の確保、行政の裁定等を明記した、NTTを含め公益事業者がもつ公共空間を活用するルールを定めべきである。また、ルール策定にあたっては、パブリックコメント方式を導入し、広く意見を聴取すべきである。

  7. 電気事業連合会
  8. 電柱は全国で約2,000万基あるが、約67%は民地に立っている。現在、電柱添架はNTT約930万、電力系NCC約70万、電力計以外のNCC約70万基等で行なわれており、年間の申出は10万本以上になる。電力各社は、共架・添架に関するパンフレットを作成しており、スケジュール・手順等を明示している。技術的な工事の場合はかなり時間がかかるが、工事の有無は2ヶ月程度で回答している。工事費用は実費をいただくが、共架料は年間1,700円である。
    管路も開放できるところは開放してきている。電力といえども建物へのアクセス部分は管路を敷設していないので、配管に苦労していることを理解してほしい。
    線路敷設権を設定すると、地権者の権利まで縛りかねず、地権者から「いつのまにか電線を張る権利をもっていかれた」と電力会社が批判される可能性が高い。電柱の約7割が民地に立っている日本と他国とでは適用を変える必要がある。

  9. 日本テレコム
  10. 線路敷設権の設定に関しては、(1)国際競争力の強化、(2)インターネット時代への対応、(3)近距離料金の引下げ、(4)加入者線・近距離線での競争促進、(5)加入者線の設備ベースでの競争促進という観点から検討すべきである。
    ローカル・ループの構築が容易にできる環境を整備する必要がある。そのためには、道路、NTT・電力の管路・電柱、上下水道、ガス、CATVなどを容易に使えるような環境整備が必要である。また、回線敷設にあたっては、掘削規制(1度掘り起こした道路は3年間掘り返せない等)、工事コストが高い(都心では1kmに3〜4億円)等の問題を見直す必要がある。
    電柱などのインフラを使わせる側と使う側とでスタンスは異なる。スムースに話が進まず、事業者側への制約が多くなる。線路が敷けないので、加入者系での競争が進まない。線路敷設権の問題は、地域通信市場における競争促進のための1つの方策として捉えるべきである。

  11. MCIワールドコム・ジャパン
  12. 新規参入を促進する方策として、線路敷設権は非常に重要である。新規参入の加速は、投資・雇用の拡大、地域通信市場での競争促進につながる。
    高速道路、鉄道、電力、河川、下水道などの「公的空間」は開放が進んでいない。法律で公共空間の開放を義務づけるとともに、第3者機関が既存設備も含めた公共空間の空き状況を把握し、公平に開放の審査を実施すべきである。また、ビル所有者に対してビル引込設備の開放を義務づけるべきである。さらに、新規参入事業者に対してのみの共同利用協定締結義務づけなどの不公平な取扱いは撤廃するとともに、新規事業者の道路調整会議への参画の柔軟化を図るべきである。


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