経団連くりっぷ No.115 (1999年12月22日)

情報通信ワーキング・グループ第9回会合(座長 立花 宏常務理事)/11月24日

自由・自主・自己責任に則った情報通信法制を


情報通信ワーキング・グループでは、第9回会合を開催し、中央大学総合政策学部の直江重彦教授より、マルチメディア時代に向けた情報通信法制のあり方と課題についてご説明をきくとともに懇談した。

直江教授説明要旨

  1. 情報化の進展と産業構造の変化
  2. デジタル化による情報通信技術の革新、インターネットの進展などにより、情報通信産業は融合化が進んでいる。従来、通信と放送とに分かれていた情報通信産業は、どのような形でも融合が可能となり、新しい情報通信産業が形成されてきている。一方、電話産業は成熟期を迎えるとともに、端末のインテリジェント化により、交換機やホストコンピュータといった「コア産業」よりも端末を使った「周辺産業」が発達するなど、産業構造が変化してきている。さらに、グローバル化が進展する中で「通信主権」という考え方が崩れ、制度の国際間調整が必要となっている。

  3. 情報通信制度のあり方と課題
  4. 現在の情報通信法制は、情報通信のコアとなる産業に着目して作られている。産業の融合化、グローバル化が進展する中で、一元的に理解でき、かつ公正な競争市場を確保する情報通信法制へと変えていく必要がある。また、グローバル化が進む中で、国際間における情報通信政策の調和が求められている。

    1. 1・2種という区分は、日本の情報通信産業発展を阻害する要因となっており、意味がない。接続ルールを従来型「このようにせよ」という規制体系の中で定めることは問題であり、正当な手続を重視したルールへと転換すべきである。

    2. 情報通信が社会・経済基盤であると考えると、ユニバーサル・サービスを確保する制度が必要になる。ユニバーサル・サービスの定義とともに、競争を阻害しないユニバーサル・サービス確保のための方策を検討する必要がある。

    3. われわれは、今変革期にいる。変革期には自由・自主・自己責任という原則を認識した上での政策が必要となる。消費者保護のあり方や情報リテラシーの確保の方策についても、こうした原則に則って考えるべきである。

    4. 技術やサービスが代わるたびにルールを新たにつくる必要があるため、今日の政府の役割は重要かつ複雑になってきている。政府は、情報通信産業を育成・支援するとともに、国民の情報リテラシーの向上、セキュリティの確保に向けた取組みが求められる。


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