社会貢献推進委員会(委員長 椎名武雄氏)/12月14日
社会貢献推進委員会では、施行後1年が経過した「特定非営利活動促進法」(NPO法)の見直しに関し、経済企画庁 余暇・市民活動室の馬場一洋 室長と大阪大学の山内直人 助教授から説明を受けた。また、「1998年度社会貢献活動実績調査」結果について審議するとともに、社会貢献担当者懇談会の活動状況や「トルコ・台湾大地震被災地支援に関する緊急アンケート調査」の中間集計結果について報告した。
NPO法が施行され約1年が経過したが、この間1,000を超える団体が法人格を取得した。同法は、国会の附帯決議によって2000年11月末までに見直しの結論を得ることとなっており、各方面で見直しに向けた検討が進められている。
NPO法は議員立法で成立した法律であることから、その見直しについても立法での検討が中心となろうが、その議論の材料を提供する意味で、現在、国民生活審議会においてNPOの法人制度と優遇税制に関する検討を進めており、2000年5月頃に中間的な意見のとりまとめを行なう予定である。
NPO法では、法人格を付与する際、許可制でも届出制でもない認証という制度が採用されているが、それがNPO側に十分に理解されていない面があり、また、所轄庁の責任も曖昧になっている。その他、NPO法人の公益性や非営利性の解釈が不明確である点、活動分野を12分野に限定していることの妥当性、同法に規定される収益事業と税法上の収益事業が同一でないこと等について検討を進める必要がある。
一方、税制の問題については、税優遇を受けるNPOの認定要件を可能な限り数値化するなど客観的基準を設ける必要があろう。また、その認定機関は新たに第三者機関を設け、手数料の徴収を含めた審査のシステムなどを検討すべきである。その際には、主務官庁の裁量により認定が行なわれる現在の特定公益増進法人(特増)制度を微調整するのではなく、新たなシステムの構築を目指すべきである。
さらに、諸外国に見られる寄付控除枠を超えた寄付に対する繰越処理の扱いや、個人のボランティア活動を政策的に支援する仕組みも検討に値するのではないか。
わが国の市民社会が成熟していくためには、「公」(公共・公益)に対する認識を変化させていく必要がある。これまでは、えてして「公」は官(行政)が担うものという考え方が一般的であったが、「公」の部分で民(企業やNPO)が果す役割は増大してきている。
税制等の政策的な支援により、市民からNPOへの資金の流れを促進することが、「公」の概念を変化させ、ひいては真の市民社会の実現に繋がるものと考える。
事務局から同調査結果の概要を下記のとおり報告するとともに、結果の公表につき了承を得た。
社会貢献活動支出額(1社平均3億8,200万円、対前年7.7%減)をはじめ、寄付金額、自主プログラム支出額など多くの指標が1997年度実績を下回った。
しかし、各社は寄付先の重点を草の根の市民活動団体にシフトさせたり、支援方法も金銭以外の多様な方法を駆使するなど、予算上の制約を受けながらも社会貢献活動がより深みのあるものへと進化していることが伺える。
今後、当懇談会では、企業とNPOとの連携を促す仕組み、とくに「民から民への資金の流れ」を促進するための税制のあり方や企業・NPO間の人材および情報等の交流を促進するための諸方策について検討を進める。
併せて、企業の社会貢献活動を取り巻く社会の変化、例えば、社会的責任投資(SRI)に見られるような多様化する企業評価の傾向などについて調査・検討を行なう。
当懇談会では、市民社会において企業がパートナーシップを組むNPO、市民、行政等との相互理解を促進し、更なる活動の促進を図ることを目的に、『社会価値創造の仕組み〜社会貢献ベスト・プラクティスの検証から』(仮題)を編集・出版する。
同書籍は、新しい時代に求められる企業の社会価値創造に資する社会貢献活動の姿を、各社が進めてきた具体的事例を顕彰することによって浮き彫りにするものであり、社会貢献担当者のみならず学生など広く一般に活用いただけるものにする予定である。
経団連ならびに1%クラブ会員企業1,043社を対象に標記調査を実施し、303社から回答を得た。
トルコ、台湾に対して義援金を拠出した企業は、それぞれ回答企業の60%と80%に達しており、義援金総額はトルコに3億3,170万円、台湾に対しては14億8,007万円にのぼっている。
これら義援金の内訳を見ると、会社の経費はもとより、社員の募金や店舗等での募金等が大きなウェートを占めている。