経団連くりっぷ No.116 (2000年1月13日)

第27回東亜経済人会議/12月13日〜14日

地震後も活力にあふれる台湾経済


東亜経済人会議日本委員会(委員長:香西昭夫氏)では、1973年の第1回会議以来、毎年1回、台湾の経済人との間で東亜経済人会議を開催している。さる12月13日と14日の両日、台北にて第27回東亜経済人会議を開催し、日本側参加者75名、台湾側参加者150名を数えた。会議では、日台双方の経済情勢や通貨危機後のアジア経済、双方の企業の国際競争力の強化策等について全体会議で討議したほか、「貿易・投資・技術協力」、「金融・証券」、「環境・エネルギー」の各分科会においてそれぞれ意見交換を行なった。
以下は、同会議における討議内容をまとめたステートメントである。なお、香西委員長は12月13日、新竹科学工業園区を訪問するとともに、王志剛経済部長(通産大臣に相当)を表敬訪問した。


第27回東亜経済人会議 ステートメント

1999年12月14日
於 台 北

  1. 第27回東亜経済人会議は、1999年12月13日、14日の両日、台北において開催された。日本側からは、香西昭夫 東亜経済人会議日本委員会委員長ほか75名、台湾側からは辜振甫 東亜経済会議中華民国委員会会長ほか150名が参加した。

  2. 今回の会議では、全体会議において「日台双方の経済の現状と震災復興のための日台協力」、ならびに「通貨危機後のアジア経済と国際競争力の強化策」について活発な意見交換が行なわれた。また、「貿易・投資・技術協力(含む観光)」、「金融・証券」および「環境・エネルギー」の各分科会において、双方の持続的な経済成長のための方策や日台協力のあり方について、建設的な議論が行なわれた。

  3. 台湾経済は、本年9月に発生した台湾中部大地震により甚大な被害を受けたものの、好調な需要と民間企業の積極投資に支えられて1999年の成長率は5.3%超を見込んでいるとの説明があった。また、地震により、台湾が半導体をはじめコンピュータ関連部品および製品の世界市場への供給基地となっていることがあらためて明らかになったが、台湾の世界市場に占める供給能力は大地震後も変わりないとの説明があった。

  4. 日本経済については、1999年初から回復に転じており、1999年度では0.6%のプラス成長を達成できる見込みであり、金融システムは安定化しつつあるとの説明があった。また、日本側からは、今回のアジア通貨・経済危機を通じて、あらためてアジア経済と日本経済の強い相互依存性が指摘された。さらに、日台双方は、日台間の貿易不均衡に留意し、引き続き不均衡是正に取り組むことで意見が一致した。そうした意味で、双方は、日台ビジネス協議会ならびに中日商務協議会の協力の下に進められてきた大型貿易・投資・技術商談訪日団の活動が年を重ねるごとに着実な成果を挙げていることを高く評価した。

  5. 日本側から、台湾中部大地震の発生に際して日系企業をはじめとする民間が提供した支援について具体的な事例を紹介するとともに、震災復興に向けて、日本の民間がノウハウや技術、人材等の各面において、台湾側からの要請に応じてできる限りの協力を行なう用意がある旨、表明した。台湾側からは、大地震の際の日本の民間による支援ならびに協力の申し出に対する謝意が示された。

  6. アジア経済については、通貨・金融危機による経済の低迷から抜け出し、明るさを取り戻したとの認識が双方から示された。しかしながら、回復の基盤はまだ脆弱であり、不良債権や対外債務の処理が当面の課題であるとともに、製造業の基盤を確立し、もって国際競争力を強化するため、中小企業や技術者の育成が中長期的な課題であるとの点で双方の意見が一致した。加えて、アジア各国の金融システム強化を支援するため、日台双方がリード役となって金融面での地域協力の可能性を検討しあう必要があるとの意見が双方から出された。

  7. 日台双方は、分科会での討議を通じて、各分野ごとの日台協力をさらに推進することで合意した。

    1. 貿易・投資・技術協力分科会では、ハイテク産業を中心に日台間の水平分業が進展する中で、日台相互間の投資や技術提携等、協力関係はこのところかなりの展開が見られるが、これを一層拡大させることが双方の利益であるとの点で意見が一致した。また、台湾側から、台湾中部大地震により台湾の観光産業が大きな打撃を受けていることを踏まえ、日本側も努力中であるが、台湾へのさらなる観光誘致への協力を呼びかけた。

    2. 金融・証券分科会では、日本の金融システムに対する不信感と信用収縮に対する懸念がようやく払拭されつつあるとの認識が日本側から示されるとともに、日本の金融機関が世界的な競争の中で、単なる生き残りだけでなく「創造的金融仲介」を果たす存在として蘇生するために企業の再編に取り組んでいるとの事例が紹介された。また、台湾側から、日本の金融機関は依然豊富な資金力を持ち、その貸出しと投資の動向はアジア経済の回復に大きな役割を果たすものであり、国内のリストラの推進と同時に、より積極的にアジアへの投融資を進めることが、金融危機後、アジア経済の回復と成長に貢献するのみならず、日本経済の迅速な回復にもつながるとの意見が述べられた。

    3. 環境・エネルギー分科会では、今後の双方の持続的な成長のためには、環境に配慮した開発とエネルギーの確保が重要であるとの点で双方の認識が一致した。日本側からは、環境に優しいエネルギーの確保や原子力、省エネルギーや環境保全のための最新の技術について紹介があった。これに対して台湾側からは、台湾における環境保全に向けた取り組みの現状と今後について説明があり、この分野において日本からの技術交流を歓迎するとの発言があった。

  8. 双方は、第28回東亜経済人会議を、双方が適当と認める時期に日本で開催することに合意した。また、第12回幹部会議を第28回東亜経済人会議以前の適当な時期に、台湾で開催することについても合意した。


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