経団連くりっぷ No.116 (2000年1月13日)

通信・放送政策部会、情報通信ワ−キング・グル−プ合同会合(部会長 大野龍一氏)/12月17日

日本経済蘇生に向け、「包括メディア産業法」制定を


通信・放送政策部会では、9月にユーザー企業からなる情報通信ワ−キング・グル−プを設置し、情報通信法制の具体案を含め、情報通信ビジネス発展のための課題と環境整備のあり方について検討を重ねてきた。去る12月17日には、標記合同会合を開催し、慶応義塾大学の林 紘一郎教授より、通信・放送融合への制度的対応のあり方について説明をきくとともに懇談した後、情報通信ワ−キング・グル−プにおける検討状況を中間的に報告した。

林教授説明要旨

  1. 通信・放送の融合の現状
  2. (1)ブロードキャスティング、コミュニケーション、データプロセッシングの3事業分野の融合、(2)ハード部分の共用化の進展、(3)同報機能の拡充などにより、どのようなメディアを使っても同じようなサービス提供が可能となっている。通信・放送の融合の問題を考える場合、この3事業をどのように分類するかが課題となる。
    米国では、第2次コンピュータ裁定において、規制下にある基本サービスと非規制の高度サービスとを線引きをしている。一方、わが国においては、公然性を有する通信と限定性を有する放送という形で線引きが行なわれているが、将来的に線引きは不可能になろう。

  3. 「包括メディア産業法」の必要性
  4. 通信・放送の融合に対応して、メディアを包括する産業法を制定すべきである。法整備の切り口としては、マルチメディア法付加型(新しい分野には新法を、既存法にそのまま付加する)、総則的法律抽出型(個別メディア法に含まれる共通部分を抽出し、共通法として制定する)ではなく、旧来の通信・放送ということにかかわりなく、コンテンツ・ネットワーク・通行権(right of way)の3分法により、水平に規律する「水平分離型」が望ましい。日本経済を蘇生させ、メディア産業を活性化させるには、この程度の施策が必要である。

  5. 通行権法(Right of Way法)の制定
  6. 規制に強弱がある産業同士が融合すれば、規制の弱い方に流れるものである。米国1996年通信法がインターネットに規制をかけないとしたことは評価できるが、通信に関する設備に対しては従来通りの規制が行なわれている。
    インターネットを発展させるのであれば、電波の割当や道路占用許可などのみを規制し、それ以外については規制をかけるべきではない。結局、通行権法(right of way法)ができるかどうかが大きな課題となる。有線の通行権は道路占用許可、無線の通行権は周波数の割当であるが、有限資源の配分は市場で行なわれるべきである。有線では通行権の債券化を図る一方、無線では使いやすい電波からオークションを導入すべきである。


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