経団連くりっぷ No.117 (2000年1月27日)

なびげーたー

途上国の民間セクター発展に一層の知的支援を

国際本部副本部長 江部 進


経団連が外務省および国際協力事業団(JICA)と推進している専門家派遣事業が発足して3年を迎える。まだ小さなこの事業を大きく機動的な事業に育ててはどうか。

「民間部門の発展なくして、途上国における真の意味での持続可能な経済発展は難しい。(中略)途上国は、開発計画の策定や各種インフラの整備、さらには市場経済化や民営化を進めるにあたり、わが国民間企業の知識や経験に基づいた知的支援を求めている。」これは、1996年10月に経団連が発表した「官民連携による途上国への知的支援の推進を求める」との政策提言に書かれた一文である。その後に起きたアジア金融経済危機は、関係諸国の民間部門の足腰に未だ弱さが見られることを明らかにした。また、市場経済化を目指す国々においても民間部門の育成が円滑に進まない状況が見られる。これは、わが国が民間企業の知識や経験をもって、この分野での知的支援を一層推し進めることの重要性を浮かび上がらせるものである。

経団連は、上記政策提言を契機に1997年度に新設された「民間セクターアドバイザー専門家」派遣を外務省およびJICAと共に推進している。このスキームは、わが国民間企業の人材を途上国に短期(1年未満)あるいは長期(1年以上)間派遣して、その知識・経験を移転し、民間部門の活性化や人材育成に資することを目的としており、経団連のイニシアチブのもと派遣先の選定や派遣専門家の人選等が行なわれ、派遣経費はODAの技術協力予算が当てられる。

制度の発足から3年、専門家派遣数は約40名となり、しかも増加傾向にある。また、電力セクター、空港運営、物流、観光振興、外資誘致促進、工業団地構想の推進など派遣分野も多岐に渡り、地域についてもインドシナ、中央アジア、ラテンアメリカなど広がりをみせている。

専門家の派遣地域・分野は、途上国の事情に精通した経団連会員企業からの生の情報に基づいて国際協力委員会の下に設置されている国際貢献・人材派遣部会の審議を経て、外務省・JICAと協議し決定される。このため、途上国のニーズに見合った、かつ、民間の技術・ノウハウを最大限に生かせる効果的な専門家派遣が実現している。例えば、ラオスにおいて、電力系統のマスタープラン作成指導のための長期専門家派遣と、それに基づく個別分野の木目細かな助言を行なう短期専門家派遣を組み合わせ、質の高い知的支援(技術協力)を実施している。

民間セクターアドバイザー専門家派遣は、民間企業の知識・経験を途上国に移転するまだまだ小さなスキームである。企業からの人材派遣協力を円滑に確保するための施策、ニーズ発掘から実施までの迅速性を高める施策、途上国民間部門への直接派遣の実現など大きく、機動的、効果的なスキームにしていくことが望まれる。


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