経団連くりっぷ No.117 (2000年1月27日)

来賓挨拶

小渕 内閣総理大臣

景気回復が最優先課題

内閣総理大臣 小渕恵三



本日、東京証券取引所の時価総額が430兆円を超え、私が総理に就任してから最高値をつけた。これは企業の皆様の努力のたまものだが、経済対策に向けた小渕内閣の努力のあることもご理解いただきたい。

経済戦略会議の樋口議長から2月に答申をいただいているが、その内容が各省庁の考えと合わない点があるため、各大臣に答申の内容を遵守するよう指示するとともに、戦略会議のメンバーと各省庁の政策担当者と8回にわたる意見交換をしていただいた。本日、その結果を答申の実施に向けた報告としていただいた。私は経済戦略会議の最高責任者としてこの報告を実現する義務がある。

その報告の中で「オブチノミクス」というよい造語があった。これは、いうまでもなく現政権の経済政策を指し、短期の景気回復と長期の構造改革を政策の柱にしている。

短期の景気回復では財政・税制両面での施策、長期の構造改革は、金融システム、減税、産業競争力、中小企業、ベンチャー、技術開発などで、例えばミレニアム・プロジェクトの推進である。ミレニアム・プロジェクトは来年から始まる2000年紀に、夢のある政策を実現しようというものである。予算面では2,500億円を別枠で用意し、そのうち1,206億円を情報化、高齢化、環境対応に向けようと考えている。痴呆症やガンなど5つの疾病については、新しい遺伝子の解明により治療方法が確立される期待があるので、年限を定めてその解明に全力をつくすべく、相当な予算を振り向けた。今後、「オブチノミクス」として是非これを遂行していきたい。

私は橋本前総理から「6つの改革」を継承した。行革については、2001年1月から1府12省庁体制になるが、公務員数は1999年に過去最大に減らした。こうした地道な努力を行なっている。全体の数を減らしたうえで人員配置は重点的に行なっており、原子力、環境、金融監督関係ではむしろ増員している。

金融改革では、内閣発足時に金融二法を通過させてもらい、細かい問題はあるものの順調にいっている。

社会保障改革については、年金、医療、介護といった個別の分野にはそれぞれ審議会などがあり、結論はでている。本日の閣議でこれらを総合的に検討するため「真に豊かな老後のための有識者会議」の発足を決定した。

財政構造改革については、当面は財源を国債に頼らざるを得ないものの、進めねばならない課題である。橋本内閣は、景気が2年連続拡大したことから、財政構造改革法をつくり財政再建に取り組んだが、アジア経済危機が勃発し、これが日本経済にも悪い影響を与え、このまま財政構造改革を進めるのは困難ということで、財政構造改革法を凍結している。このままでよいわけではないと考えている。

2000年度予算は、積極財政といわれているように、私はまず景気の回復に重点を置いている。企業が活性化することで財政にもよい影響を与えてくれると信じている。財政構造改革は重要だが、二兎を追うと一兎も得ずになってしまうおそれがあるので、まずは景気回復を優先させたいと思っている。宮澤大蔵大臣は、積極財政は今年限りだといっているが、そういう思いを込めている。

先般、アセアンプラス3の首脳会議に出席したが、アセアン諸国は経済に自信を持ってきている。確かにアジアの経済は好転しつつある。これには約350億ドルの新宮澤構想など、総額500億ドルに及ぶ日本の対アジア支援が大きく貢献しているものと思われる。韓国、タイ、マレーシアとも1998年にはマイナス成長だったものが1999年、2000年(予測)ではプラス成長になっている。日本は経済規模が大きいので、なかなかこのように好転するのは難しい。

アジア諸国の首脳から、戦後、日本はいろいろ援助してくれたが、基本的には戦後の賠償という意味合いがあった。ところが、新宮澤構想以後は、日本はアジアに対して本当の友邦として接してくれていると感じている、と語っていた。

政府もすべきことはしっかり行なうが、官需から民需へといわれるように日本経済の再生のためには、日本を代表する企業が元気にならないといけない。経団連の会員企業がご苦労しながら立派な業績を上げていただくことが、日本の将来に必要なことだと考えている。


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