経団連くりっぷ No.117 (2000年1月27日)

来賓挨拶

深谷 通商産業大臣

企業活力が発揮できる環境を整備

通商産業大臣 深谷隆司



わが国の景気については、昨年来、小渕総理のリーダーシップのもと政府があらゆる分野の政策を総動員し、また、経済界の懸命な努力もあって、今年度の経済成長率は0.6%のプラスとなる見通しである。さらに、平成12年度は官需から民需への円滑なバトンタッチを図ることにより経済を本格的な回復軌道に乗せ、1%のプラス成長を実現したいと考えている。

税制については、企業が活力を存分に発揮できる環境整備という観点に立ち、法人税、所得税、相続税および固定資産税等の基幹的な税制の改正を行なうこととなった。その内容としては、中小・ベンチャー企業税制の拡充等、経済の構造改革を進める上で必要な措置を講じるとともに、住宅ローン減税の延長等、景気にも配慮したものとなっている。

また、経済界から要望のあった連結納税制度については、1999年の自民党税制改正大綱で「2001年度に会社分割税制の導入を待って連結納税制度の導入を目指す」とされたが、これは従来の方針から後退したものでは決してない。政府としては、この大綱を文字通り受け止め、連結納税制度も含めた企業組織再編に係わる税制の導入に向け最大限の努力を払っていく。

中小企業の問題については、先の臨時国会を「中小企業国会」と位置づけ、36年ぶりに中小企業基本法を改正するなど、中小企業の多面性を踏まえながら、中小企業全体の経営基盤を確保するための諸政策が講じられたところである。

とくに、セーフティネットの観点から、貸し渋り問題への対応に万全を期すため、特別保証制度の枠を10兆円追加し、1年間延長することとした。1998年10月から始まったこの制度では、20兆円の枠のうち18兆8,000億円の融資が行なわれているが、これまで代位弁済は0.5%に止まっており、極めて順調な状況といえる。

各企業では競争力を強化するため、「選択と集中」の原則のもと事業の再構築が図られているが、大企業のリストラによって下請企業が厳しい状況に置かれているという指摘もある。私は、事業の再構築によって企業の足腰を強くすることが、中長期的には経済の安定、雇用の確保に繋がるものと考えている。しかし一方で、企業経営者においては、安易なリストラに走るのではなく、下請企業等にも十分な配慮をお願いしたい。

最後に、通商政策については、先のシアトルでのWTO閣僚会議では、各国の考え方が収斂せず、新ラウンドの立ち上げに到らなかったが、わが国の主張には圧倒的な支持を得ることができた。今後、政府としては、新ラウンドに向けた道筋を早期につけるべく、年明け早々にジュネーブにわたり、関係各国に積極的に働きかけていく。皆様にも機会あるごとにご発言いただくことによって、さまざまな角度からWTOに対する他国の理解を広げていくことが重要であり、是非ご協力いただきたい。


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