経団連くりっぷ No.117 (2000年1月27日)

ABAC日本支援協議会/12月16日

ABAC活動に関する報告会を開催、
引続き、ABAC日本支援協議会が発足


ABAC(APECビジネス諮問委員会)は、今年も報告書をまとめAPECメンバー国・地域の首脳に提出した。そこで、アジア・大洋州地域委員会では、ABAC日本委員の富士総合研究所の楠川特別顧問、松下電器産業の松下副社長、システムス・インターナショナルの荒井会長から報告書の概要などについてきいた。また、報告会に引続き、ABAC日本支援協議会の設立総会が開催された。

  1. ABAC活動に関する報告会
    1. 金融タスクフォース(楠川委員報告)
    2. 本タスクフォースでは、「アジア地域の金融危機からの早期回復」と「持続的成長の実現」のための具体的なアクション・プランを取りまとめた。前者については、アジア各国の国内金融市場の改善のための具体策や貿易金融債権の証券化等を提案した。後者については、長期的な経済発展と金融システム及び金融市場の安定化のために、国内債権市場の発展を促すための具体的措置ならびにAPEC域内の金融専門家の知識と経験を活用する枠組みの構築を提案した。

    3. 行動計画監視委員会(松下委員報告)
    4. 当委員会としては、1994年のAPEC首脳会議で合意されたボゴール宣言の自由化に関する目標達成が、現在の進捗状況では非常に厳しいという認識の下、各メンバー国・地域政府のより一層の努力を求めた。さらに、各メンバーが提示する個別行動計画(IAP)の透明性・緻密性の向上ならびに広報活動の充実を提言した。商品およびサービスにおける貿易・投資の障害、特に非関税問題に関する詳細な研究も行なった。

    5. 提言の実施タスクフォース(松下委員報告)
    6. 本タスクフォースにおいては、APEC食料システムの問題が主要な議題であった。具体的には、食料貿易の自由化を主張するアメリカ、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアを中心とするケアンズ・グループと、食料安全保障の観点から、自国生産の不足分を貿易により補完するとの考え方に立って農業の多面性を重視する日本と韓国の間で議論が激しく対立した。報告書では、

      1. 農村インフラ構築の戦略、
      2. 食料の安全性、食料システム技術及びSPS(衛生植物検疫措置)の問題、
      3. 食糧安全保障の確保、
      4. 貿易および投資の自由化プロセス、
      について具体的提言を発表した。

    7. 能力構築タスクフォース(荒井委員報告)
    8. 本タスクフォースは、貿易・投資の自由化に伴う環境変化に対応する能力を構築するための方策を検討し、具体的には経済・技術協力に関する既存のプロジェクトについて見直しを求めるとともに、新たなプロジェクトについては、

      1. 経済統治、
      2. 税関手続きと基準認証への取組み、
      3. 資源とインフラ整備についての長期的課題への取組み、
      4. 情報交換システムの整備、
      の4項目に重点を置くことを提案した。

    9. 2000年の活動
    10. ABACでは、2000年11月のブルネイ会議に向けて、金融アーキテクチャー・タスクフォース(FATF)、ビジネス円滑化タスクフォース(BATF)、テクノロジー・タスクフォース(TTF)、行動計画監視委員会(APMC)という構成で活動を展開する。FATFでは、楠川委員が共同議長を務め、人材育成やアジアにおける債権市場整備の具体的方策等について検討する。BFTFではAPECビジネス・ビザカード等について、TTFでは情報通信技術やバイオテクノロジー等について検討する。また、APMCでは、荒井委員が共同議長を務め、各国・地域の自由化の進捗状況を引続き監視していく。

  2. ABAC日本支援協議会設立総会
  3. 設立総会には、ABAC日本委員、今井経団連会長、秋山関経連会長をはじめ約50人が出席した。席上、山本外務政務次官から祝辞があり、寺田通産省経済協力部長から、深谷通産大臣の祝辞が披露された。また、当協議会会長には、立石オムロン会長が選任された。

    1. 今井会長挨拶要旨
    2. APECがWTO交渉の前哨戦の様相を呈するにつれて、ABACで扱う問題が複雑多岐にわたり、3人の委員でフォローすることが困難になってきている。また、欧米では民間経済界が、自ら事業活動を行ないやすい貿易・投資ルールを提唱し、政府にその実現を図るという構図になっている。わが国経済界としても、グローバル競争を勝ち抜くために、積極的にルール作りに参加することが重要である。このような状況に対応するために、経済5団体が当協議会の発足を呼びかけたところ、多くの方にご参加頂き感謝している。

    3. 立石ABAC日本協議会会長就任挨拶要旨
    4. 当協議会の主たる役割は、日本企業にとってより良い事業環境を作る手段の1つとしてABACを活用する方向で、3人の委員と連携をとることである。同時に、ABAC活動の効率化を求めるということも重要である。以上の活動の成果をあげるために、ABAC日本委員はもとより、わが国政府ならびに日本企業の関係者との協力関係を密にしていきたい。

    5. 深谷通産大臣祝辞要旨
    6. 近年、各国においてABACに対する支援を組織化し、経済界の声をABACに反映する動きが高まってきている。そのような中、当協議会が設立されることは、大変意義深く、わが国のABACへの取組みが一層活発になることを期待する。政府としてもAPECの活動が経済界にとり実り多いものとなるよう尽力する。

    7. 山本外務政務次官祝辞要旨
    8. WTOの閣僚会議では一定の結論が得られなかったことから、APECならびにABACの役割がこれまで以上に重要になると考えられる。こうした時期に、わが国経済界が、当協議会を発足させたことは、非常にタイムリーであり、心強い。政府としても、ABAC活動を、さらに支援していきたい。


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