経団連くりっぷ No.118 (2000年2月10日)

第36回四国地方経済懇談会/1月19日

わが国経済社会の構造改革と
四国地域の新たな発展に向けて


経団連・四国経済連合会(四経連)共催の標記懇談会が高知市において開催された。地元経済人約110名の参加のもと、経団連側は今井会長、古川、辻の両副会長、橋本評議員会副議長が出席し、四経連首脳と最近の経済動向、社会基盤整備、広域経済文化交流圏の形成等について意見交換を行なった。また、懇談会に先立って(株)技研製作所を訪問し、杭を無振動・無騒音で圧入・引き抜きする世界初の工法、サイレントパイラー等を視察した。

  1. 四経連側発言要旨
    1. 開会挨拶
      近藤耕三 会長(四国電力会長)
    2. 四国の景気動向については、生産活動に持ち直しの動きが見られ、景況感も改善されつつあるが、中小企業では立ち遅れており、財政による景気の下支えが求められる。
      なお、米国流のグローバルスタンダードや市場万能主義については、世界の潮流を踏まえつつも、日本の伝統や文化も生かしながら改革に取り組むことが必要である。
      また、本州四国連絡橋3ルート(以下本四3橋)が完成し、高速道路の整備もピッチが上がっているとはいえ、四国の基盤整備は依然として遅れている。地方の公共投資に対する風当たりは強いが、今後とも四国への重点投資を主張していきたい。
      今後、四経連としては、四国の歴史・文化に触れ親しむ「歴史・文化道」の整備等を通じた交流人口の拡大、ならびに、四国の独自の技術を活かした新産業の創造、さらに子供達の科学離れへの対応に重点的に取り組んでいきたいと考えている。

    3. 四国経済の現状と課題
      水木儀三 副会長(伊予銀行会長)
    4. 四国経済は一部では改善の動きも見られるものの、12月は過去10年間で最多の倒産件数を記録するなど基調としては厳しい状況にある。しかし、過度の悲観主義に陥ることなく、この1年危機意識をばねに自己改革を断行して行かなければならない。しまなみ海道完成による本四3橋時代を迎え、今年3月には四国4県をXの字型に結ぶ高速道路も完成する。これら広域交流基盤を最大限に活用し、21世紀に向けた新しい四国の実現に取り組みたい。
      第1の課題は、広域経済文化交流圏の構築である。東西の太平洋新国土軸と南北3本の地域連携軸の早期実現を図り、本四3橋を活用して地方自らの活力による国土構造を構築する必要がある。そのためには、自然との共生等が一層重要となってこよう。
      第2の課題は、既存産業の高度化および新産業の創出である。四国は中小企業が多いので、世界に誇る技術を有する企業を育成し、県民所得の増加に結びつけたい。

    5. 地域産業の新生に向けた取り組み
      濱田耕一 副会長(四国銀行会長)
    6. 雇用問題に対処し、地域が自立的に発展していくためには、地域産業の新生が重要課題である。幸い、高知県をはじめ四国には独創的な技術を活かし、高いシェアを誇る企業が多数存在する。また、技術の高度化や新産業創出に不可欠な大学・研究機関の整備も進んでいる。
      ベンチャー企業の先駆けともいえる日本最初の商社「亀山社中」を興した坂本龍馬等、時代の先覚者に範を取り、新規産業が創出され易い環境づくりに努めたい。

    7. 地域の自立に向けた社会基盤の整備
      入交太二郎 副会長(入交産業会長)
    8. 本四3橋時代を迎え、広域経済文化交流圏を構築するためには、太平洋新国土軸の形成に不可欠な紀淡・豊予の両海峡横断プロジェクトや高速鉄道の整備等に取り組まなければならない。
      四国における高速道路の供用率、国道の道路改良率は全国でも最低であり、早急な整備が望まれる。また、毎年、自然災害による大きな被害を被る四国においては、災害に強い地域社会の実現のために、災害に対するリダンダンシーの確保が求められる。
      昨年のカナダ視察においては、高速道路、鉄道、航空網、情報ネットワークの進んだ整備がカナダの産業再生に寄与している現状を観察し、インフラ整備の重要性を痛感した。地域における公共事業に対しては慎重論も見られるが、地域にとって真に必要なインフラ整備については、長期的観点から着実に推進することが重要である。

    9. 交流人口の増大を目指した地域づくり
      伊東弘敦 副会長(四国旅客鉄道会長)
    10. 瀬戸大橋、明石海峡大橋、しまなみ海道の本四3橋の完成により、人・モノの交流が活発化している中、四経連では「歴史・文化道」の整備と本四3橋を介した広域都市圏の形成に取り組んでいる。
      「歴史・文化道」については、四国の官民が一体となって1997年に「歴史文化道推進協議会」を設置して以来、積極的な活動を展開し、1999年3月策定の四国地方開発促進計画にも名称が具体的に明記された。今後とも広く全国にアピールしていきたい。
      本四3橋を介し、地域連携軸の形成に向けた官民一体の取組みが進展している。核となる広域経済文化交流圏を牽引する役割を担うのが、本州と四国の都市が活発に交流・連携する「広域都市圏」の形成である。1999年3月、四経連は中経連と共同で高松・岡山・倉敷を含む「備讃瀬戸広域都市圏」の形成を提言しており、今後とも、広域的な交流の拡大を図っていきたい。

    11. 徳島におけるベンチャー、新規産業について(フロア発言)
      住友俊一 副会長(阿波銀行会長)
    12. 全国に藍商人が雄飛した江戸の時代より、徳島県にはベンチャースピリットが綿々と継承されている。県のベンチャー企業投資額についてみると、徳島県は全国の自治体の中で最大である。また、徳島大学や徳島ニュービジネス協議会等では、ベンチャー創造への産学官の取組みが具体化しており、今後、規制緩和等の環境整備を一層推進することが必要である。

  2. 経団連側発言要旨
  3. 橋本副議長から産業競争力強化に向けた取組み、辻副会長より最近の環境問題、古川副会長より広域観光戦略の推進に向けて、種々説明がなされた。
    最後に今井会長より、四国側の取組みに対して経団連は可能な限り応援を続けていくと、締め括った。


くりっぷ No.118 目次日本語のホームページ