第121回関西会員懇談会/1月20日
「21世紀に向けて飛躍のための構造改革を推進する」をテーマに、関西会員懇談会を開催した。懇談会には今井会長、熊谷、古川、辻、大賀、片田、森下の各副会長および橋本評議員会副議長が出席し、会場は多数の関西地区会員で埋め尽くされた。懇談会に先立ち、大阪府内にある生物分子工学研究所(社長:古川経団連副会長)を訪問し、最先端のテクノロジーを視察した。
関西の経済状況も、ようやく底を脱して景況感も良くなりつつあるが、失業率については全国が4.5%であるのに対して、関西地区は5.3%と、厳しい面も依然として残っている。
関西経済界として、以下の点を経団連に要望したい。
大阪商工会議所として、中小企業への支援、ベンチャー企業の育成・支援、都市作りの3本柱に取り組んでいる。
中小企業は大企業と比べて景況感も厳しく、厳しい状況であるが、中小企業こそわが国の経済発展の原動力であり、意欲的に経営革新に取り組み、持てる強みを発揮できるような各種サポートや環境整備(近畿71商工会議所共通の企業データベース作り等)を推進していきたい。
またイノベーションの担い手としてのベンチャー企業が多数出現するための環境整備を行うことも喫緊の課題となっている。「ナスダック・ジャパン」の創設により、21世紀を担うベンチャー企業の更なる育成に期待したい。
さらに地方の時代といわれるなかで、大阪市では国際集客都市を目指しており、観光振興アクションプランを策定して産業観光の振興に取り組んでいる。国としても観光政策を重要な政策の柱として取り組んでいただきたいと考えている。
現在進められているWTOの基本理念は自由貿易の確保であるが、国ごとに関税、非関税の障壁に大きな差があり、繊維業界はじめ日本産業界は、不公正な条件の下での競争を強いられている。経済界として、個別産業ごとの個別の対応をするのではなく、政府としての通商政策に関するスタンスの統一が形成できるように取り組んでいくべきである。
WTOについての繊維業界の主張は、保護を目的とするものではなく、決められた手続きのもと、同じ土俵で競争ができるようにして、国内生産や雇用を確保することを目指している。
このWTOへの取組みにつき、日本と欧州は比較的似通った見解を有していることから、米国の貿易に対する恣意的な見解を抑制するように協調していくことが大切であろう。
京都産業界は、ハイテク関連事業が好調である一方、伝統産業が低調であることから、地元産業の不安が増大しているのが現実である。
これからの産業界では、豊かで持続的な発展を続けていくためには、人類の英知を結集して環境問題に取り組んでいくことが不可欠である。その一環として、2002年に開催される「地球サミット」が日本で開催されることになれば、京都は150万の人口を抱えながら豊かな自然にも恵まれているうえ、地球環境産業技術研究機構も設置されており、国内では開催に最適の地であると自負している。
関西地域の再生を図るために、まず観光産業を振興し、地域を活性化していく必要がある。幸い関西は、豊富な歴史資源に恵まれ、大阪・京都・神戸はじめ、個性ある都市が多く、これらのポテンシャルを十分に生かしていきたい。さらに今後、ユニバーサルスタジオ建設、サッカーW杯開催や2008年のオリンピック誘致など活性化の要素は多い。
さらに都市の再生といった観点からは、地方都市整備のための国家戦略を持ち、縦割りではなく省庁横断的な「都市再生委員会」のようなものを設置したうえで、情報ネットワークや災害対策を踏まえた都市のインフラ整備が重要である。欧州の都市のように、地域主権を実現していくことで各都市に活力と意欲を持たせていかなければいけない。経団連でも、これまで以上に地域の活性化ということに関心を持っていただきたい。一方、関西はじめ地域においても、もっと政治に関心を持ち大事にすることが重要であろう。
関西会員の発言に対し、橋本副議長より銀行の融資態度に関して、「銀行の貸出金が減ったのは、各企業が過剰債務を減らすなど資金需要が弱いため。今後は政府の保証制度も活用し、意欲ある中小企業向けの融資を積極的に伸ばしていきたい」旨の発言がなされた。
また、最後に今井会長より、現在は本格的な景気対策が最重要課題であり、経団連としても、政策判断を誤らないようにしなければならないとの総括をもって結びとした。