経団連くりっぷ No.118 (2000年2月10日)

日本ブラジル経済委員会 アクション・プランに関する打合せ会/1月17日

戦略的な日伯ビジネス関係の構築


昨年9月の第8回日本ブラジル経済合同委員会での合意に基づき、日本ブラジル経済委員会では、ブラジル全国工業連盟(CNI)と共同で、日伯経済関係の強化に向けたアクション・プランの作成作業を進めている。アクション・プランに関する打合せ会では、上智大学の堀坂 浩太郎教授を迎え、21世紀における戦略的な日伯ビジネス関係について講演をきくとともに、意見交換を行なった。

堀坂教授講演要旨

  1. 日本とブラジルの関係
  2. 現在、日伯経済関係は下降局面にあり、日本は、今後ブラジルとの関係について明確なヴィジョンを打ち出す必要がある。
    特に、日伯経済関係は、1970年代のような「補完関係」から「競争と協調」への転換が必要である。両国には、

    1. ブラジルは1980年代の、日本は1990年代の「失われた10年」の経験、
    2. 従来の発展モデル・官民関係モデルからの離脱、
    3. 民主主義・市場経済という価値観の共有(但し、米国型の市場競争による強者適合の理念を全面的には認めていない)、
    4. 企業社会の国際化、
    という今後の協力関係を議論する上での共通の基盤が存在する。

  3. 官民一体型からの離脱の必要性
  4. かつてのような官民のナショナル・プロジェクトの推進は難しい段階に入っている。
    民主導・官サポートという分業体制を明確化する必要がある。双方の民間経済団体は、貿易・投資・技術開発などに関する大きな枠組みをつくり、他方で官は基準認証、投資協定、税関手続などのテーマについて国益の観点から交渉を行なうべきである。

  5. 具体的な協議アジェンダについて
  6. 今後、両国の産業界は、経済関係の強化に向けて、以下のようなアジェンダについて協議すべきである。

    1. 生産システムの変容:
      ポスト輸入代替工業化、ポスト官民協調の生産システムの構築が必要である。情報革命、グローバリゼーション、ブラジルにおけるコスモポリタンな企業社会の形成などの変化を踏まえて、今後、両国は新たな企業経営思想を相互に提示していくべきである。

    2. 拡がりをもったバイラテラル協議:
      二国間の問題だけでなく、欧米諸国、メルコスール、アジアなど第三国市場をも視野に入れるべきである。また、日本の中小企業の進出を含めた、ブラジルにおけるサポーティング・インダストリーの育成は不可欠である。

    3. 企業の社会的責任:
      コーポレイト・ガバナンスなど企業の基本的価値観に関する議論が必要である。

    4. 情報交換の重要性:
      経済団体による定期的な協議、インターネットを利用した情報流通システムの構築、両国の基礎理解を助ける研究が必要である。


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