経団連くりっぷ No.118 (2000年2月10日)

国土・住宅政策委員会(委員長 古川昌彦氏)/1月28日

沖縄県への企業誘致をいかに推進するか

−特別自由貿易地域現地視察会を開催


経団連では、基地経済から脱却し自立を目指す沖縄の振興を支援している。一方、沖縄県では現在、特別自由貿易地域への製造業を中心とする企業の誘致等に努めており、経団連ではこれに呼応して、沖縄県商工労働部の協力のもと、沖縄県企業立地推進に関する現地説明会を開催し、総勢17名で沖縄を訪問し、中城湾港新港地区等を視察した。

  1. 自由貿易地域那覇地区視察
    (上原義晴 自由貿易地域管理事務所長説明要旨)
    1. 沖縄自由貿易地域の設置経緯
    2. 沖縄では、米国の統治下にあった1959年10月に最初の自由貿易地域が那覇港三重城に指定されていたが、1972年5月の日本復帰の際、琉球列島米国民政府令で設置されていた「旧」自由貿易地域は消滅し、沖縄振興開発特別措置法において、沖縄自由貿易地域制度が法制化されることとなった。
      その後、1987年12月に沖縄開発庁長官から那覇地区が地域指定を受け、翌88年に供用が開始されたときには27社が入居するなど活況を呈したが、バブル崩壊後は、一時、9社まで落ち込んだ。しかしながら、1999年4月以来、入居のテナント料を3割引き下げたり、通信コストに対する手厚い補助などの措置が奏効し、今年に入って新たに6企業が入居を希望するなど、やや持ち直しているところである。

    3. 自由貿易地域における利点
    4. 自由貿易地域における利用上のメリットとして、

      1. 保税制度の活用、
      2. 税制上の優遇措置、
      3. 金融上の優遇措置、
      が挙げられる。
      1.については、外国に再輸出される外国貨物ならびにその蔵置の期間に対して、関税・内国消費税が課されないというメリットがある。また、2.に関しては、工業、道路貨物、運送業、倉庫業等の用に供する設備で、1,000万円を超える設備を取得、建設した場合、特別償却を行なうことができるとともに、5年間、その事業税の課税を免除するなどの優遇措置が認められている。さらに、3.において、沖縄振興開発金融公庫および県の低利融資制度を受けることができる。
      また、若年層の高失業率は沖縄県が抱える最大の課題であるが、若年者を雇用した企業に対して、月額15万円を限度として支払った賃金の50%を最大3年間助成する制度によって、若年者雇用を奨励している。
      施設使用料や保税許可手数料も大幅に引き下げているので、自由貿易地域那覇地区に入居する企業が今後一層増加することを大いに期待している。

  2. 中城湾港新港地区視察
    (仲里繁雄 沖縄県商工労働部副参事説明要旨)
    1. 特別自由貿易地域
    2. 特別自由貿易地域では、沖縄振興開発特別措置法に規定する関税法上の保税地域制度、関税の課税の選択制度が適用される上、地域内に新たに設立された企業に対して新設後10年間、所得の35%につき法人税の課税所得から控除されるという優遇措置が適用される。自由貿易地域(那覇地区)と比較しても大きなメリットとなっており(下表参照)、これによって、課税対象所得を5億円と想定した場合、約1億円の法人税が軽減され、立地企業にとって大きなインセンティブが働くものと考えられる。

    3. 中城湾港新港地区の概要
    4. 中城湾港は、沖縄本島中南部の東海岸に位置し、約2万4,000haの広大な海域を有し、古くから天然の良港として利用されてきた。新港地区は、沖縄県における物資の円滑な流通を確保するための流通拠点としての機能を有している。現在、産業振興、雇用創出、産業構造の改善等に寄与する工業用地の確保を図るなど、流通機能と生産機能を併せ持った「流通加工港湾」の整備を図ることを目的として開発事業を推進している。
      さらに、沖縄県経済振興策の一環として、特別自由貿易地域制度が制定されたため、1999年3月31日に新港地区の122.4haが特別自由貿易地域に指定された。これを受けて、1999年度より特別自由貿易地域の用地分譲を開始したところである。現在、公募している97.9haの土地に対して、特に

      1. 電気・電子、精密機械、バイオテクノロジー等の先端技術、
      2. 健康食品、健康飲料、
      3. 物流業(卸売業や倉庫業等のストックヤード)、
      等の業種に誘致を働きかけていきたいと考えている。また、初期投資の負担軽減のため、賃貸工場の建設も進めることにしている。


特別自由貿易地域における優遇措置

優遇項目優遇措置の概要備考

 

 

 
(1) 所得控除制度 特別自由貿易地域において新たに設立された常時雇用者数20名以上の企業について、新設後10年間、所得の35%につき、法人税の課税所得から控除(法人事業税、住民税法人税割も同様)

注1:(1),(2),(3) のいずれかを選択。

注2:(1) の対象業種は製造業、梱包業、倉庫業に限る。

注3:(2),(3) の対象業種は製造業・梱包業倉庫業と道路貨物運送業、卸売業

(2) 投資減税制度 域内に設備の新増設を行った企業において機械15%、建物8%について法人税から控除(法人税額の20%限度、繰越4年、投資価格の上限額20億円)
投資下限額は1,000万円(建物、機械および装置など)
(3) 特別償却制度 機械50%、建物25%
投資下限額は1,000万円(建物、機械および装置など)
投資損失
準備金制度
内国法人が域内の認定法人に対し認定の日以後5年以内に出資等を行った場合、取得価格の40%について該当内国法人の損金処理を認める。



関税の課税の
選択制の適用
特定品目を除き原料課税または製品課税の選択が可能
(特定品目:輸入割当、国家貿易、関税割当、価格支持の品目)

保税地域許可
手数料の軽減
保税蔵置場及び保税工場の最小面積区分に係る許可手数料が半減する。
この他、地方税、融資などについても、各種の優遇措置が講じられている。なお、所得控除制度(1) 以外は、自由貿易地域那覇地区にも適用される。
【問い合わせ先】
沖縄県企業立地推進課
TEL 098-866-2770


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