経団連くりっぷ No.118 (2000年2月10日)

国土・住宅政策委員会 土地・住宅部会(部会長 田中順一郎氏)/1月18日

東京の都市づくりビジョンを策定

−東京都幹部との懇談会


経済戦略会議の提言を受け、今後の都市再生の進め方を検討するべく、中山建設大臣、石原都知事はじめ関係自治体の長、学者、経済人によって構成され、小渕首相も出席する「都市再生推進懇談会」が設置された。同懇談会では2月2日に第1回会合を開催し、当面、東京圏における都市構造のあり方を検討することとなっており、経団連からは、古川副会長、出井新産業・新事業委員会共同委員長が参加することになっていることから、土地・住宅部会では、東京都の都市再生に向けた取り組み、今後の課題等について、東京都の青山 副知事、成戸 寿彦 技監・都市局長、杉浦 浩 施設計画部長から説明をきくとともに意見交換を行なった。

  1. 東京の都市再生について
    −青山副知事説明要旨
    1. 各国の大都市圏整備の状況
    2. 世界の大都市はいずれも都市基盤整備に力を入れている。東京も再生に向けて空港、環状道路などの整備が必要である。東京の3分の1の圏域人口(2,200万人)しかないニューヨークはペンシルバニア駅から18km、20km、8kmの位置にニューアーク空港、ケネディ空港、ラガーディア空港があり国際線の滑走路は9本あるが、今なお、アクセス鉄道の整備を進めている。パリもシャルル・ドゴール空港の大改造を行なっている。クアラルンプールではセパン国際空港の構想が進められ、韓国では仁川の国際空港が急ピッチで建設されている。香港ではチェック・ラップ・コック空港が、シンガポールではチャンギ空港ができている。上海でも浦東の空港建設事業が動いている。
      道路整備についても欧米の主要都市の環状道路の整備は9割方終了し、現在は高架を撤去して地下に潜らせ、現在の道路をグリーンベルトにする事業が動いている。

    3. 東京圏メガロポリス構想
    4. 石原都知事は国会で「東京圏メガロポリス構想」を提唱し、千葉、埼玉、神奈川の3県、千葉、川崎、横浜の3政令指定都市と検討を始めている。東京都としても現在、都市計画地方審議会において50年先の東京を見据えた東京の都市づくりのあり方について検討を行なっている。
      東京都では、バブル期の人口予測を修正し、現在の人口1,190万人が2005年には人口が1,170万人に減ることになると予測している。厚生省の全国レベルの予測でも早ければ2004年、遅くとも2011年をピークに人口が減少することとされており、市街地の放射方向への外延的拡大は止まったといえる。社会基盤整備もそれを前提に進めていかねばならない。
      特に、交通網については放射方向の整備から環状ネットワークの整備の方へ注力する必要がある。事実、最近の鉄道の混雑率の推移を見ても、中央線のような放射方向の路線の混雑は緩和されたが、武蔵野線や南武線のような環状線は混雑率が高まってきている。

    5. 環状道路の整備推進
    6. 環状道路の整備の遅れは深刻である。首都高の都心環状線は延長距離で15km、首都高の総延長距離226kmの5%にすぎない。しかし、常磐道、東北道、関越道から中央道や東名に抜ける車は都心環状線を通らざるを得ず、首都高東京線の1日の利用台数94万台のうち約46万台が都心環状線を利用し、そのうち6割にあたる約27万台は都心には用がない。各地域への高速道路は、東京の生活道路を経由しないように首都高で直結されたが、その結果、都心環状線とその周辺が混雑することとなった。
      東北から関西に抜ける車を都心環状線以外の道路を使って抜けられるようにすることが必要である。政府、東京圏の自治体では圏央道、外環道、中央環状の3環状の整備を重点的に進めている。これまでも圏央道の埼玉県部分の開通により、関越道から中央道方面への流れがよくなり、周辺の国道の交通量が減少した。東京都でも圏央道の整備を進め、現在、青梅〜八王子間の用地買収を進めているが、この整備が進めば、東北方面から中央道までの道路の流れはよくなるが、東名に抜ける道路がない。そのままでは吉祥寺方面の生活道路に影響が出る懸念があり、外環西側の整備が急がれる。
      石原知事は、東京都内の自動車の平均速度を現在の時速18kmから30kmへ上げることができれば環境問題の低減に加え、時間、エネルギーなどのコストの低減も図ることができると訴えている。

    7. 環状鉄道の整備促進
    8. 鉄道整備については、今年12月に大江戸線(都営12号線)が開通し、都区部のいずれの場所からも500m以内に鉄道駅ができることになる。大江戸線は28駅中、21駅がJR、私鉄等に連絡しており、全駅にエスカレーター、エレベーターが設置されている。

    9. 垂直方向の財源配分の是正を求める
    10. 現在、税収は国税と地方税の比率が2:1であるが、歳出構造は国が1、地方が2である。東京都は交付税は受けられず、補助金の支給だけを受けている。今後、地方分権を進める上では、国と地方との間の垂直方向の配分を見直すことが必要である。

    11. 土地収用法の見直しを求める
    12. 市街地の再開発において民間の果たす役割は大きい。取付道路などの公共基盤整備も民間に分担してつくってもらっている。しかしながら土地収用法については、民間施行の再開発組合や区画整理組合による再開発事業を収用対象事業として認めていない。また収用手続について、反対運動を展開している個人一人ひとりに全員聴聞をする必要があるといった問題もある。こうした規定については見直しを求めていきたい。

    13. 意見交換(要旨)
    14. 経団連側:
      諸外国と比べて容積率規制が厳しすぎるのではないか。

      東京都側:
      総合設計制度など民間開発の都市再開発への貢献度に応じてインセンティブを与える仕組みもあり、実はドッグランド並みの開発は実行可能である。容積率を増やすと人口が増え、道路インフラなどの整備が必要になるという「容積率絶対思想」にこだわらず、容積率を増やすと知的空間、文化空間が増やせるといった考え方も取り入れていきたい。

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