経団連くりっぷ No.119 (2000年2月24日)

日本メキシコ経済委員会(委員長 川本信彦氏)/1月28日

メキシコ大統領選挙は与党が有利

−田中駐メキシコ大使と懇談


在中南米諸国大使会議に出席するため一時帰国した田中駐メキシコ大使を迎え、最近のメキシコ情勢や日墨関係について説明をきいた。田中大使は、7月に予定される大統領選挙は、与党のラバスティーダ候補が有力との見方が大勢であると述べた。経済は全般的に好調であるが、米国経済および石油への依存度の高さ、金融機関の不良債権問題といった懸念材料もあると説明し、また日墨自由貿易協定の早期締結に向けた検討が必要との考えを示した。

  1. 大統領選挙は与党が有利
  2. 本年7月2日に予定されている大統領選挙の主な候補は、与党PRI(制度的革命党)のラバスティーダ前内務大臣、PAN(国民行動党)のフォックス前グアナファト州知事、PRD(民主革命党)のカルデナス前連邦区知事の3名である。PRIが内部的な民主化努力により支持を増やす一方、PRDとPANは大野党連合に失敗、これに現政権の経済運営が良好なことも加わり、ラバスティーダ候補が支持率40%と最有力である。7月までに前回大統領選挙時のような政治的暴力や、米国経済の崩壊による急激な経済の悪化などが起こらない限り、ラバスティーダ候補が当確と大勢は見ている。

  3. 経済は好調だが懸念材料も
  4. マクロ経済指標は全般に好調である。1999年の経済成長率は3.4%、株価は年間90%も上昇する一方、インフレ率は12.3%にまで低下した。為替も1ドル=9.5ペソと強く、貿易額は米国の好景気を受けて輸出入とも伸びている。対外債務はGDP比36%にまで減少し、財政赤字、政府歳出規模も適正な水準にある。
    ただし、次のような懸念材料もある。第1に、貿易の8割、投資の6割を依存している米国の経済が悪化すると、打撃が深刻である。第2に、石油への依存度が大きいため、高水準にある石油価格が下落した場合が心配である。第3に、金融機関の不良債権問題が信用収縮を引き起こしている。政府は銀行預金保護基金(FOBAPROA)の債券の利払いを本年から予算に計上したり、破産法の改正を目指すなど、解決に向けて努力している。

  5. 日墨自由貿易協定締結の検討を
  6. 日本の対メキシコ輸出は年々増加しているが、メキシコの貿易に占めるシェアは低下している。同様の事情を抱えるEUは、メキシコとの間に自由貿易協定を締結した。
    日本とメキシコとの間では、貿易・投資促進をめぐる政府間の定期的対話が昨年からスタートした。そのフォローアップとして、投資保護協定をめぐる話し合いも行なわれたが、今後は自由貿易協定の早期締結に向けた検討をすべきである。そのために関税の企業経営への影響など実体面の調査を行なう上で、民間企業の協力が不可欠である。


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