経団連くりっぷ No.119 (2000年2月24日)

日本ブラジル経済委員会(委員長 室伏 稔氏)/1月24日

日伯経済関係の活性化を

−鈴木駐ブラジル大使との昼食懇談会


日本ブラジル経済委員会では、一時帰国中の鈴木 勝也 駐ブラジル大使を招き、昼食懇談会を開催した。鈴木大使は、欧米企業が積極的に進出するなか日本企業のプレゼンスが低下しているが、(1)1990年代を通じたブラジル経済の変化、(2)ブラジル市場の世界戦略上の重要性、などを考えると、早急に日伯経済関係の活性策を検討する必要があると述べた。

鈴木大使講演要旨

  1. ブラジル経済の変貌
  2. ブラジルは、1990年代に開放型市場経済へと政策を大きく転換した。また、1994年のレアル・プランの導入によってハイパー・インフレの抑制に成功した。
    こうしたなか、欧米企業は、公社・公団の民営化への参加、ブラジル企業のM&A(吸収・合併)を通じて積極的にブラジルに進出した。ブラジルの直接投資受入額は、昨年には約300億ドルと、世界第4位、新興国では中国を抜いて第1位となった。

  3. 日本企業の後退
  4. 日本は、資源確保を目的として、1950年代末から1970年代にかけて、セラード開発、ウジミナスなどの「ナショナル・プロジェクト」を官民を挙げて推進してきた。しかし、1980年代のブラジルの累積債務問題、日本企業の大幅な「アジア・シフト」の結果、日伯関係は冷え込み、現在に至っている。
    対ブラジル直接投資における日本のシェアは年々低下し、1999年には国別で第10位以下となった模様である。在留邦人数も激減している。

  5. ブラジル市場の重要性
  6. ブラジルのGDP額は世界第8位であり、これは南米経済の半分強に当たり、ASEAN10カ国の合計を上回る規模である。
    欧米企業は、巨大なブラジル市場とともに、メルコスールや米州全域での主導権を握ることを考えている。日本企業にも、世界戦略の中でブラジルをどのように位置付けるかといった発想を持って欲しい。

  7. 日伯経済関係強化が必要
  8. 今後、両国経済関係が活性化するためには、民間主導の直接投資が不可欠である。政府も、国際協力銀行の投融資などを通じて側面から支援したい。
    近い将来、穀物の輸出等を中心として、ブラジルと中国など東アジア諸国が経済関係を強化していくのは間違いない。日本は、ブラジルにおける世界最大の日系人社会とナショナル・プロジェクトという2つの橋頭堡が風化してしまう前に、ブラジルとの関係を再構築していくべきだろう。
    こうした意味からもCNIと経団連で作成作業を進めているアクション・プランに強く期待している。
    本年4月には、現在国会で審議中のブラジル多年度投資計画(「進め、ブラジル」)の説明のため、タバレス予算企画大臣が来日する予定である。日本の産業界としても積極的に参加すべく検討して欲しい。


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