経団連くりっぷ No.119 (2000年2月24日)

貿易投資委員会 総合政策部会(部会長 團野廣一氏)/1月20日

日・EUは引き続き包括的なWTO新ラウンドの
早期立ち上げを主張

−通産省通商政策局 細野課長よりきく


深谷通産大臣は1月中旬、欧州を訪問し、日EU閣僚会議に出席するとともにムーアWTO事務局長他と会談した。一連の会談は、昨年12月のシアトルにおけるWTO閣僚会議の交渉中断後、わが国産業界がWTOへの対応を検討していくうえで重要と思われることから、通産省通商政策局の細野国際経済課長よりその模様についてきいた。

  1. 新ラウンドを巡る意見交換
  2. 日EUはかねてよりWTOにおける包括的なラウンド交渉の実施を支持してきた。シアトル閣僚会議の交渉中断を受けた今回の日EU閣僚会議において、双方は新ラウンドの早期立ち上げの重要性を再確認するとともに、以下の点で意見の一致をみた。

    1. 新ラウンド交渉の立ち上げを目指して日EUが緊密に協力していく。

    2. 新ラウンドの交渉アジェンダは、本年からの交渉開始を合意済みの農業・サービス、市場アクセスのみならず、アンチダンピング等既存のルールや規律の改善・強化、投資・競争などについてのルールの策定を含む十分に包括的なものとすべきである。

    3. 途上国の意見を効率的に取り込むため、WTOの意思決定過程における効率性と透明性の適切なバランスの確保を検討する。

    4. 途上国対策として、既存のWTO協定の実施、先進国の市場アクセスの改善、技術支援に関連する課題が重要である。後発開発途上国に対し無関税の市場アクセスを与えるLDCイニシアティブを他の先進国とともに推進する。

    5. 農業とサービスの交渉は合意済み課題としてWTOにおいて協定に従い開始する。

  3. WTOの意思決定方式
    1. シアトル閣僚会議において、WTOの意思決定方式の問題が顕在化し、ムーア事務局長を中心に意思決定の透明性と効率性に関して検討を行なうこととなっている。
      深谷通産大臣とラミー欧州委員会委員およびムーアWTO事務局長との二者会談においても議論がなされた。EUとは引き続きこの問題について緊密に議論していくことで合意した。これらの成果を受けて、日本政府としても、今後のWTOにおける議論の進展に積極的に貢献する方針である。

    2. 「市民社会」等との関係については、WTOの透明性の向上の観点から、WTO文書の早期公開等の課題について、引き続き積極的に取り組むことで一致した。

  4. 今後の対応
    1. 新ラウンドの早期立ち上げに向けて、APEC、OECD、先進国首脳会議などを利用しながらモメンタムを維持していくことで双方の意見が一致した。

    2. 新ラウンドの早期の立ち上げに向けて、途上国対策が重要であり、EUとは、引き続き緊密に議論していくことで合意した。


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