経団連くりっぷ No.120 (2000年3月9日)

中近東地域駐在大使との懇談会(司会 熊谷直彦副会長)/2月18日

関心が高まる中近東


昨年来の油価の上昇を受けて、わが国における中近東地域への関心は再び高まりつつある。そこで、わが国の同地域駐在大使の一時帰国を機に標記懇談会を開催した。会合では、外務省の榎 泰邦 中近東アフリカ局長の挨拶に続き、イスラエル、サウジアラビア、アルジェリア、トルコ、イランの情勢につき各国駐在大使から説明をきいた。

  1. 茂田 駐イスラエル大使
  2. バラク政権は、和平推進派であり、和平交渉の進展が期待される。実際、シリア、パレスチナとの交渉が再開された。対シリア交渉では、イスラエル軍のゴラン高原からの撤退時期、手順等が鍵となろう。また、7月末までのレバノンからの撤退は、首相の公約である。パレスチナとの交渉は遅々としているが、国家樹立の方向は確認されている。和平合意後、国民投票にかけられる予定である。

  3. 高野 駐サウジアラビア大使
  4. 高齢なファハド国王に代わり、アブドラ皇太子が実質的に権力の座にある。日サ関係は、アラビア石油の採掘権延長問題に関わらず良好である。ナイミ石油相は、サウジは今後も従来通り日本への安定的な石油供給を行なうと述べている。

  5. 渡邊 駐アルジェリア大使
  6. アルジェリア情勢は、政治、治安、経済すべての面で質的に変化している。ブーテフリカ大統領の国民和解政策が功を奏し、これまでに6,000名が投降する等、テロリストの数は激減した。海外危険情報では依然危険度4であるが、レベル引下げを前向きに検討したい。経済面では、政府は自由化、市場経済化を推進し、外国直接投資の誘致に力を入れている。

  7. 竹中 駐トルコ大使
  8. 昨年4月に総選挙が実施され、三党連合与党が発足、以来、既に100を超す法案が国会で可決されるなど、政治は安定しつつある。中でも、BOTプロジェクトの国際調停による紛争解決を実現するための法案と憲法改正法案が国会を通過したことは、特記すべきである。この3年間で合計80億ドルのIMF・世銀支援がコミットされた。

  9. 孫崎 駐イラン大使
  10. 内政面では宗教的政治・経済支配が修正されつつある。サウジ等周辺アラブ諸国との関係は安定し、対米関係にも変化の兆しが見られる。本日、イランでは国会選挙が実施されているが、改革派がリードしており保守派は少数派となろう。
    経済的には、仏・伊・英国企業が石油化学、電力、鉄鋼等のプロジェクトを受注している。イラン市場の潜在力は高い。わが国政府は、昨年通産省の貿易保険を再開、円借款の再開も検討している。日本企業の積極的な進出を求めたい。


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