経済政策委員会 企画部会(部会長 小井戸雅彦氏)/2月22日
経済政策委員会 企画部会では、21世紀初頭に予測される労働力人口の減少の下で、経済社会の活力を維持していく方策について検討を進めている。この一環として、日本銀行調査統計局の植村 修一 経済調査課長から高齢化が潜在成長力に及ぼす影響につき、説明をきくとともに意見交換を行なった。
「日本の将来推計人口」や労働力率のトレンドをもとに、今後、労働投入量の減少により、どの程度潜在成長率が押し下げられるかを成長会計に基づき推計した。その結果、2010年までは実労働時間の減少が効き、年平均0.2%ポイント程度、2011年〜2025年はこれに潜在就業者数の減少要因が加わり、同0.5%ポイント程度押し下げられる見通しとなった。
一方、「最適成長モデル」に基づく推計によると、少子高齢化の進展は貯蓄率の低下を招く。貯蓄率の低下は資本蓄積の伸びを鈍化させるので、資本投入量の減少による影響も含めた押し下げ効果は、モデルのベース・ライン対比2025年まで年平均で0.85%ポイントと推計される。
資本と労働投入の減少を補うには、全要素生産性(TFP)を伸ばす必要がある。しかし、1990年代入り後、企業の研究開発分野の多角化は頭打ち傾向にあり、研究開発の生産誘発効果も低下しているので、技術進歩の寄与に楽観はできない。今後は、女性や高齢者の活用による労働投入量の下支え等サプライ・サイドの対策に加え、消費者の購買意欲を高める商品を投入し、市場の拡大を図ることで生産性を高める等、需要サイドからの対策が重要である。
高齢化社会の到来による国民負担率の上昇は、経済の活力を削ぐとの議論がある。1960年から1996年にかけてのOECD諸国のデータを元に国民負担率と実質成長率の関係について見ると、因果関係は明確でないものの、両者の間には負の相関が認められた。
経団連側出席者からの「潜在成長率は自然に上下するものなのか」、「好況の米英から社会保障システムを見習う点はあるか」との質問に対し、「低い期待成長率が潜在成長率を下げ得る。年金・医療制度、公共投資の改革により少子高齢化への不安を払拭し、期待成長率を高める必要がある」、「社会保障の規模の大小と経済活力の相関は必ずしも明らかでない。失業保険等現役世代の制度については他国の制度を参考にしつつ、高齢者に係る制度は各国固有の事情を尊重すべき」との回答があった。