経団連くりっぷ No.120 (2000年3月9日)

貿易投資委員会 総合政策部会(部会長 團野廣一氏)/2月15日

WTO一般理事会はサービス貿易自由化交渉の開始を決定

−外務省経済局 高瀬室長と懇談


昨年12月のシアトル閣僚会議の交渉決裂を受けて、WTOの新ラウンド交渉の行方に不透明感が高まる一方、サービス分野については、2月のWTO一般理事会で自由化交渉の枠組みが合意され、サービス貿易協定(GATS)にしたがって交渉が進められることとなった。そこで、外務省経済局の高瀬 サービス貿易室長よりジュネーブでの最近の議論の状況をきくとともに、次期サービス交渉に対するわが国産業界の要望を取りまとめるべく議論した。

高瀬外務省サービス貿易室長説明要旨

  1. サービス交渉の大枠
    1. サービス貿易自由化交渉は、新ラウンド交渉の立ち上げ如何にかかわらず、本年からの交渉開始が協定上予定されていた。

    2. 2月7・8両日に開催された一般理事会において、(1)サービス交渉は、サービス理事会特別会合で行なうこととし、第1回会合を2月25日前後に開催する、(2)サービス理事会および同特別会合の議長は、マーキ在ジュネーブ カナダ大使(元国際貿易大臣)が就任する、といったことが決定された。

  2. サービス理事会の下部機関での議論
  3. 自由化交渉と併行して次のような作業が引き続き行なわれていく見通しである。

    1. GATSルール作業部会:

      サービス貿易のセーフガードに関する規律策定などを議論している。セーフガードのルール策定については途上国が積極的であるが、サービス貿易統計の未整備など困難が多い。

    2. 国内規制に関する作業部会:

      わが国として特に重視している国内規制の透明性や必要性に関する議論を行なっている。

    3. 特定約束委員会:

      1. 既存の約束表の基礎ととなっているサービス分類表等に関する検討を行なっている。現在、環境、エネルギー、郵便・クーリエ、法律等の分野の分類の見直しに関する提案が出されている。
      2. 例えば、エネルギーは主要な部分がモノの生産と概念され、サービスとして分類されてこなかった。探索・掘削、貯蔵、精製、ネットワーク等に関するサービスといった項目から成るエネルギー・サービスをまとめて自由化交渉してはどうかという提案が出され、今後検討することになっている。
      3. 環境サービスは、既存の分類では、汚水、廃棄物処理、衛生などから構成されている。これに騒音対策、水質汚染、森林・水産資源管理などを加えようという提案や、システム開発、施設の建設、運営・管理を含む一連の環境サービスを一括して交渉しようという提案が出されている。
      4. 既存のサービス分類表自体を大きく改訂することは適当ではないとの見方が現在は大勢である。むしろ交渉に際しては、特定分野に関わる項目をグループ化したうえで交渉し、その結果を既存の分類に基づき約束する方法でどうかという意見が多い。サービス分類に関わる議論は、まさに自由化交渉の土俵となるものであり、十分な検討が必要である。


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