経団連くりっぷ No.121 (2000年3月23日)

なびげーたー

特殊法人等の改革

産業本部長 永松恵一


省庁再編の準備が進む中で、疎かにされている特殊法人等の改革を政治の決断で進めるべきである。

特殊法人の改革は、1980年行革の一環として18法人の縮減が実施され、翌年発足した土光臨調によって本格的な議論が始まった。実に20年の歴史があるわけで、確かにその数は、ピーク時の113法人から78法人にまで減少している。しかし、その中味は、単なる統合である場合がほとんどであり、また特殊法人新設の困難を回避するため認可法人の設立をもって組織代替させているケースもある。政治力学の働き易いテーマであり、毎年のように取り上げられるが、行政改革の名にふさわしい成果をあげているかとなると物足りない。

最近でも、1998年6月に成立した中央省庁等改革基本法42条で特殊法人の整理合理化が謳われているし、1999年6月の衆参それぞれの国会附帯決議、また10月の自自公連立政権合意書にも同様の趣旨が織り込まれている。しかし、具体的な動きとなると覚束ない。

経団連では、行政改革の総仕上げの一環として、先に財投改革の入口・中間について意見をとりまとめ、また、近々出口である特殊法人改革の総論について意見を公表する予定であるが、それぞれの政策の妥当性を踏まえつつ、各論の核心にどこまで迫ることができるかが次の検討課題である。

特殊法人の各論に関する論文も散見されるが、総務庁行政監察局の報告書は、政府内部の行政監察とはいえ、その指摘事項の延長線上にいくつかの方向性を読み取ることができる。

例えば、既に統合、民営化の検討が閣議決定されている労働福祉事業団の労災病院については、労災患者の割合が入院ベースで52%から6%へ、外来ベースでは21%から3%へ激減していること、民間病院に比べ過大とも思える設備投資が行なわれていること等が指摘されている。各種道路公団については、つとにプール制が有名であるが、個別道路の決定は公団の経営責任範囲外としながらも、繰り返される償還計画の先送りに基本的な問題提起をしているように思える。日本私立学校振興・共済事業団は、その事業の中で、1998年10月から財投の繰上げ償還が認められたにもかかわらず、利ざやの確保を図るため、繰上げ償還の受入額を申出前の2割程度に抑えている。森林開発公団(現:緑資源公団)の大規模林道事業は、最近、一部の事業中止が決定されたが、国内材の不振、環境問題の重要性に鑑みれば、1969年の新全総に基づく林道開発は、とうの昔に見直されて然るべきだろう。

特殊法人等の改革は、政策や事業継続の必要性の判断が基本となる。必要とされる 場合、どういう事業形態が望ましいか、PFIなど新しい仕組みを使えないか等、多面的な検討が必要とされる。


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