経団連くりっぷ No.121 (2000年3月23日)

第565回常任理事会/3月7日

21世紀の日本はどうあるべきか

−「21世紀日本の構想」懇談会報告書についてきく


昨年3月、小渕総理は、日本のあるべき姿を検討するため、「21世紀日本の構想」懇談会を設置した。懇談会では、さる1月18日に「日本のフロンティアは日本の中にある−自立と協治で築く新世紀」と題する報告書をとりまとめ、総理に提出した。そこで、懇談会の幹事を務めた山本 正 日本国際交流センター理事長より、報告書のポイントについて説明をきいた。

  1. 報告書の反響
  2. マスコミ等でも広く取りあげられ、総じて好意的に評価されている。特に海外で大きな反響を呼んでいるが、その理由としては、

    1. 海外で大きな関心事となっている日本の変革について、報告書が踏み込んだ議論を展開していること、
    2. 報告書で取りあげたテーマがいずれの国でも重要な課題になっていること、
    があげられる。

  3. 何が問われているのか
  4. 追いつき追い越せ型の従来の社会システムは、個人の創造性、才能よりグループの論理を優先するものであった。その中で生まれた「出る杭は打たれる」という社会通念が社会を硬直化させた。グローバル化、多様化が進む環境下で新たな発展を遂げるには、社会のあり方を変革する必要がある。そのためには、官が全てを決定し、それに盲従するのではなく、民も決定に参画するという意味で、「統治からガバナンス(協治)へ」の転換が必要である。また、協治には、「個の確立」が不可欠であり、自分の責任でリスクを負って、新しいことに挑戦する個が求められる。

  5. 21世紀日本のフロンティア
  6. そのような新しい社会システムの出来合いのモデルは海外にもない。むしろ日本国内にそれを築くに十分な才能、知的・経済的資源が存在する。それら日本のフロンティアを開拓するには、第1に、個人の「先駆性を活かす」ことが不可欠である。英語の実用能力を身につけることも一つの課題である。第2に、「多様性を力とする」ことが重要である。具体的には、非営利民間セクターの強化、移民政策の明確化等が求められる。第3に、「ガバナンスを築く」必要がある。それには、政府の役割を絞り込むための突っ込んだ議論も必要である。第4に、「『開かれた国益』を求める」必要がある。中国・韓国とは、単に外交努力だけでは足りず、深みのある関係を築くための営みとして「隣交」が求められる。

  7. 今後の課題
  8. 懇談会の使命は、21世紀における日本のあるべき姿のビジョンを描き、国民的な論議を起すことにある。ビジョンを実現するためのロードマップの策定が今後の課題であり、それは政治、民間のリーダーの仕事である。経済界においても大いに議論され、ロードマップの策定に参画していただきたい。


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