経団連くりっぷ No.121 (2000年3月23日)

産業技術委員会 バイオテクノロジー部会(部会長 山野井昭雄氏)/3月3日

日米欧3極の調和を目指すバイオ特許政策

−特許庁 小野審査第四部長よりきく


バイオテクノロジー分野における技術革新が急速に進んでいるが、わが国のバイオ関連の特許取得は欧米に遅れをとっている。そこで、当部会では、特許庁審査第四部の小野 新次郎部長より、バイオ関連特許をめぐる最近の課題と国際動向について、説明をきくとともに意見交換を行なった。

小野部長説明要旨

  1. バイオ関連特許の日米欧比較
  2. 国内のバイオ市場規模は1998年は9,444億円であったが、2010年には25兆円程度になると見られている。しかし、遺伝子分野では、基本特許は欧米がほぼ独占しており、日本における特許出願件数も米国からのものが最も多い。また、日本では企業が特許出願の大半を占めるのに対し、米国では大学・研究機関、ベンチャー系が大半を占める。
    米国ではここ数年、情報技術の進展と遺伝子解析機器の性能の高まりを背景として、ゲノム関連ベンチャーが台頭するとともに、特許出願件数も急速に伸ばしている。

  3. DNA断片(ESTs)の特許上の問題
  4. ESTとは遺伝子断片であり、解析の過程では、遺伝子断片を集め、配列を決め、そこから全長遺伝子を取り出す。その全長遺伝子がタンパク質を発現し、有用性が認められたものが新薬へと繋がる。
    従来より、遺伝子解析の特許化に関しては、国際的に様々な議論が行なわれてきたが、最大の問題は、遺伝子断片の解析に際して、その有用性をどう見るかにある。

  5. DNA断片に関する三極比較研究
  6. 1999年の日米欧特許庁による比較研究の結果、DNA断片に関して、機能や特別な有用性のないものは特許化できない。一方、特別な有用性が開示されたものは他に拒絶理由が存在しない限り特許化できる。また、DNA断片が同じ起源に由来するだけでは発明の単一性要件を満たさないとの結論を得た。さらに、慣用方法が得られ機能が知られたタンパク質をコードするDNAと、相同性の高さに基づきある構造遺伝子の一部と推測されたDNA断片は原則として特許化できないとしている。

  7. 特許庁の取組み
  8. 特許庁では昨年、化学関連分野の審査の運用に関する事例集、遺伝子関連発明の審査事例集を公表した。また、日米欧の3極特許庁でバイオテクノロジー分野における運用の調和に向けた取組みを行なっている。
    1999年3月から特許電子図書館を開設し、インターネットによる総合的な特許情報の提供サービス、技術分野別特許マップの作成等により、特許申請の円滑化、迅速化を図っている。


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