経団連くりっぷ No.122 (2000年4月13日)

なびげーたー

グローバル化時代の人材育成

社会本部長 田中 清


資源に乏しい日本が21世紀において魅力ある国を築いていくためには、人材育成が最大の鍵になる。

昨年来、グローバル化の急進展の中で、産業競争力の強化が大きな課題となり、人材育成委員会(浜田 広委員長)においても、こうした観点から人材育成策について検討して3月28日「グローバル化時代の人材育成について」と題する提言をとりまとめて発表した。

当面の産業競争力強化策としては、教育の情報化、英語力の強化、創造性の涵養、産業技術を支える教育の強化、基礎学力の維持・向上の5点を訴えているが、本稿では、教育システムの改革と企業の果たすべき役割の2点についてふれたい。

まず、教育システムの改革については、生徒には受験戦争という過酷な競争がある反面、教育界には競争原理があまり働かず、切磋琢磨して、それぞれの特徴を生かした魅力ある教育を提供しようという気運が盛りあがらないという問題がある。とくに、都立や区立の学校では、学校運営や先生の給与、人事等が硬直的なため、私立に比べて地盤沈下が著しいのみならず、学級崩壊など荒廃が進んでいる。

そこで、提言では

  1. 教育に競争原理を導入するため、公立小中学校では通学区域を大くぐりにして、学校選択の幅を広げることや、大学の学部設置を自由化すること、
  2. 学校があげた成果を第3者が評価する制度を導入すること、
  3. これに関連して、インターネット等を通じて、授業、講義内容等を公開すること、
などを提案した。

次に、教育の質をあげるために企業がどのような役割を果たすべきかということであるが、教育の問題については、文部省、学校、親、企業等、関係者が多数あり、それぞれが他者に責任をなすり合いがちになる。その意味で、経済界自らできることを実行していくことは、教育をよくするために重要なことだと思う。

とくに、2002年から、小中学校、高校において、毎週数時間「総合的学習」の時間が設けられる。文部省も授業内容を指導せず、教科書も使わない。生徒が現実の産業、社会や自然にふれることによって、何のための勉強なのか、勉強で覚えたことがどう役立つのかを知ることは勉強意欲の増進につながる。経済界にとっても、生徒の職業観の涵養や企業への理解増進等、多くのメリットがある。

そこで、提言では、経営者や管理職の学校への講師派遣や企業のホームページにおけるキッズコーナーの設置(子供と教員への情報提供)を含めた12項目の協力事業を提案した。会員各位にアンケート調査して、各項目について賛同あるいは実施する企業を募って、その情報を経団連あるいは経済広報センターのホームページを通じて教育界に提供していきたい。会員各位のご協力を期待している。


くりっぷ No.122 目次日本語のホームページ