経団連くりっぷ No.122 (2000年4月13日)

「特殊法人等の改革に関する第一次提言」を建議


行政改革への取組みの中で、特殊法人等の改革はこれまでも一貫して重要な課題の1つであったが、中央省庁等の改革や財投改革においては、抜本的な改革が行なわれたとは言い難く、行政のスリム化や官民の役割分担等の観点から、改めてその必要性が高まっている。そこで、経団連では、昨年11月より、行政改革推進委員会(委員長:大賀典雄副会長/ソニー会長)の下に「特殊法人改革ワーキンググループ」を設置し、改革の方向についての検討を重ねてきた結果、3月28日に標記提言をとりまとめ、政府・与党等関係方面に建議した。以下はその概要である。

  1. 改革の必要性
    1. 特殊法人については、土光臨調以降、行政の減量化と官民の事業分野の調整等の観点から数次に渡り整理合理化等の改革が行われたが、単なる組織統合に止まり、機能等の抜本的な見直しが行われたとは言い難いものが多く含まれている。

    2. 中央省庁等改革の中で財投改革が実施されるが、出口部分にあたる特殊法人等の改革については、資金調達面を通じた間接的な取組みに止まるなど、ほとんどの問題が先送りの扱いとなっている。

    3. 現在の特殊法人等が実施している事業についても、独立行政法人の枠組み、あるいは同様の制度の下で運営すべき事業等がかなりあると思われる。

    4. 認可法人は特殊法人と同様の取組みが求められるものであり、行政の外延部とみなされる公益法人についても、その改革を検討していく必要がある。

  2. 改革の基本的考え方
    1. 特殊法人等は、戦後復興期から高度経済成長期に、行政需要の増大に応え、一定の政策目的の実現のために設立されてきたが、その後の社会経済情勢の変化や官民の役割分担のあり方についての考え方等を踏まえ、

      1. 設立の根拠とされた政策目的が、現在においても妥当かどうか、
      2. 政策目的自体が現在においても必要であるとしても、特殊法人等の形態をとる必要があるか、他の手段で代替可能ではないか、
      などの視点で見直し、廃止・統合・事業の縮小の他、民営化ないしは民間法人化等の自立化、あるいは非公務員型の独立行政法人化や利子補給等の代替手段への移行等を進めることが基本である。

    2. 上記見直しの結果、特殊法人等として今後も存続が必要な事業については、組織・経営の効率化・活性化のため、独立行政法人制度に準じた共通制度を整備する必要がある。

  3. 具体的な改革方策
    1. 特殊法人等の整理・縮小と定期的見直し
      1. 2001年1月の新体制への移行に合せて、政府は中央省庁等改革基本法等に基づく特殊法人の整理合理化の実現のため、権威ある第三者的な機関を設置すべきである。政府は、当該機関による閣議決定等の実現状況の点検や下記基準による見直し等に基づく提言等を踏まえ、自らも徹底的な事業の見直しにより期限を切って具体案を策定し、政治の決断による特殊法人等の整理・縮小を図るべきである。(見直し基準略)

      2. 社会経済情勢の変化等を踏まえた行政運営の実現のため、特殊法人等の実施する政策自体の是非から実施体制等に至るまでの総合的な見直しを定期的に行うことを制度化すべきである。

    2. 共通制度の整備
      1. 中期目標・中期計画の義務付けと客観的評価機関の設置
        引き続き特殊法人等の形態を維持する法人についても、中期目標・中期計画の義務付けや、中期目標終了時における客観的な評価に基づく改廃を含めた見直し等、独立行政法人と同様の制度を確立すべきである。

      2. 会計処理の適正化、財務情報のディスクロージャーの徹底

        1. 会計基準
          特殊法人等の会計処理基準については、企業会計原則に沿ってその適正化を図るとともに、特殊法人等と子会社・関連会社・関連公益法人との連結会計のあり方を検討すべきである。

        2. 外部監査
          特殊法人等の会計処理の公正性確保のため、民間企業と同様に、公認会計士による外部監査を義務付けるべきである。

        3. 財務内容等の開示
          特殊法人については、閣議決定等により、子会社及び関連会社の一覧の公表が義務付けられているが、その徹底を図るとともに、加えて、認可法人を含めた財務内容等の開示、全ての子会社・関連会社・関連公益法人との連結財務諸表等の作成・公表を義務付けるべきである。

      3. 情報公開
        独立行政法人はもとより、出資金・補助金等の国の関与度や事業内容等から行政の代行機関、外延部と位置付けられる特殊法人等について、情報の開示と提供に関する法制度を早急に整備すべきである。

      4. 天下り受入れの原則禁止と内部登用の促進、民間人の活用
        特殊法人等の組織の活性化や効率的な事業運営等のため、天下りの受入れを原則として禁止し、内部者の登用を図るとともに、民間人の活用を進めるべきである。そのためにも公務員制度の改革が併せて必要である。

      5. 共通法制の整備
        特殊法人等についても、評価、財務・会計・監査・経営内容の公開、調達及び業務委託方法、役員の権限及び責任、政府の関与・規制、破綻及びその処理の仕組み等の基本的制度等、共通法制の整備を検討すべきである。


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