経団連くりっぷ No.122 (2000年4月13日)

企画部会(部会長 小井戸雅彦氏)/3月24日

産業構造審議会答申「21世紀経済産業政策の課題と展望」

−通産省 勝野企画室長よりきく


経済政策委員会 企画部会では、21世紀初頭に予測される労働力人口の減少の下で、経済社会の活力を維持していく方策について検討を進めている。この一環として、通産省大臣官房の勝野 龍平 企画室長から、3月16日に公表された産業構造審議会の答申「21世紀経済産業政策の課題と展望」について、説明をきくとともに意見交換を行なった。

  1. 勝野室長説明要旨
    1. マクロ経済の将来像
    2. 「小さな政府」を目指した思い切った経済社会システム変革を行なわず、現状で推移した場合、TFPの低迷や労働力人口の減少等により、実質経済成長率は2010〜2025年度で年平均で約▲0.2%とマイナス成長へ転落する。さらに2025年には国民負担率が約6割、財政赤字ストックが対GDP比4倍を越える等、次世代に対する過重な負担は避けられない。したがって、国民の活力の維持・向上のためにも、2%程度の実質成長が不可欠である。2%成長は、公共投資と社会保障費等一般経費の削減による「小さな政府」の実現と、R&D・IT投資を年平均7%で伸ばし続けることで達成が可能である。
      産業面では、ハードとソフトを統合した第3の商品群(サードウェア)産業、高齢社会産業、海洋・航空・宇宙等のフロンティア産業、環境産業、感性産業等が発展する産業群として期待される。

    3. 今後の経済産業政策の基本的方向性
    4. 経済社会の持続的発展基盤の確保には、高齢者・女性の就労や転職に中立的な制度、環境調和型社会システム、官・民・NPOの三元的組織等を伴う「開放・連携型システム」の構築が必須である。
      さらに、この「開放・連携型システム」構築には、高齢者や女性の積極的な社会参画の創出、公共サービスのアウトソーシング等個々人が自らの希望と能力を活かせる多様な就業・社会参画機会を幅広く提供できる「多参画社会」の形成と、技術革新システムの刷新、環境調和型経済社会の実現等の絶えざる技術革新や、活発な起業による「経済システムの競争力強化」に向けた政策展開が必要である。「多参画社会」は、個々人の自己実現の欲求や社会参画に伴う潜在的な需要を顕在化させる一方、「経済システムの競争力強化」は、経済効率の向上・供給基盤の強化を実現する。この結果、双方が相まって、新たな好循環が形成され、経済は自律的に持続可能となる。

  2. 質疑応答(要旨)
  3. 当会側出席者より「GDP以外で経済社会を評価する尺度はあるか」、「米国の退職者協会は3千万人を擁する大きな市場。日本企業も異業種と連携し、購買層への横断的働きかけが必要では」等の質問があり、勝野室長から、「知的資産の輸出入比、高齢者等の社会参画率、リサイクル率等が考えられる」、「潜在需要の顕在化は、多参画社会の実現で可能となる」との回答があった。


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