経団連くりっぷ No.122 (2000年4月13日)

国土・住宅政策委員会 地方振興部会(部会長 阿比留 雄氏)/3月21日

21世紀の沖縄経済の自立化に向け、いかに取り組むか


経団連では、基地経済から脱却し自立を目指す沖縄の振興に協力すべく、現地視察・説明会の開催、沖縄への企業立地を呼びかけるホームページの開設等に取り組んでいる。また、地域の活性化を検討する当部会では、3月23〜24日、沖縄を訪問し、稲嶺県知事をはじめ地元関係者との懇談会等を開催した。そこで、同懇談会に先立ち、沖縄経済の現状を多角的に検討するため、内閣内政審議室の安達 俊雄 内閣審議官(沖縄問題担当)を招き、沖縄振興方策に関する政府の取組みと今後の課題等について説明をきくとともに懇談した。

  1. 安達審議官説明要旨
    1. 沖縄経済振興政策の経緯
    2. 1995年の米兵による少女暴行事件を契機として、沖縄に対する政府の取組みが不十分であったとの反省をもとに、内閣として総合調整を図る「沖縄政策協議会」が1996年9月に発足した。同協議会は、首相と北海道開発庁長官を除く全閣僚、沖縄県知事から構成され、これまで、地域経済の自立、雇用確保、県民生活の向上等に関して協議を重ねてきた。
      また、1998年4月より、法人所得の35%が控除される特別自由貿易地域、15%の投資税額が控除される情報通信産業振興地域・観光振興地域を創設するなど、前例のない税制対策を実施している。
      さらに1998年12月、稲嶺氏が県知事に就任してからは、特別自由貿易地域への立地促進のための賃貸工場の整備、沖縄自動車道の通行料金の割引、航空運賃の再引下げ等を柱とする知事要望6項目が出され、1999年4月、沖縄政策協議会において了解された。このほか、観光・リゾート振興に直結する緊急対策として、海岸整備や道路整備等に対して100億円の特別調整費を活用することが決定されたところである。

    3. 沖縄経済の現状と課題
    4. 沖縄の失業率は昨今、若干の改善を示しているとは言え、7.7%と全国平均4.1%に比べて著しく高い。これは若年労働者の失業率が高いためであるが、若年労働者は何らかの形で生活支援を受けており、全体としては悲観すべき数字ではないとの見方もある。しかし、世帯主で見ても4.0%をマークしており、本土の2.9%よりも相当高い。知事選で現職候補を破って稲嶺氏が当選した背景にも若年層の鬱積する不満があったのではないか。
      基地経済への依存度の推移を見ると、本土復帰当時(72年)の15.6%から1996年の4.9%と、名目的には減少しているが、基地周辺整備事業費や市町村等への交付金等を加えると約7%の依存度を示しており、沖縄の民間住宅投資とほぼ同率であることからも、決して低い水準とはいえない。
      財政依存度については、1972年の23.5%から1996年の32.7%へと増加しており、対全国比でも2倍近い。こうした高失業率および依存型経済を改善するためには相当の努力が必要である。

    5. 政策の理念と基本的な考え方
    6. 自立型経済の構築に当たっては、沖縄の産業界や県民が主役となり、地域自らが持続的成長の原動力を持つことが必要である。政府としては創業支援や人材育成等、民間活力を引き出すための条件整備を行なう。
      また、沖縄をわが国経済社会に貢献する地域として位置付けるとともに、沖縄の特殊事情を的確に認識し、沖縄振興策を推進することが重要である。さらに、アジア・太平洋地域における人、物、情報の結節点として発展することが期待される一方、基幹産業としての観光・リゾート産業および新リーディング産業としての情報通信産業の発展や、製造業・農林水産業における分野別優位性の発揮が求められる。
      経済振興と基地問題とのバランスある解決を図るためにも、費用対効果を今まで以上に勘案し、地域間のバランスや公平性に留意した県土の均衡ある発展が望まれる。

    7. 製造業および情報通信産業の振興
    8. 沖縄の製造業発展に向け、県内需要のみにとらわれない積極的な対外販路の開拓が必要である。このためには、特別自由貿易地域への立地促進のための受皿施設の整備など企業立地条件の整備に向けた取組みが必要である。
      また、沖縄はその地理的条件、インフラ整備の諸計画等から見て世界の情報通信ハブ基地として発展する可能性を秘めており、沖縄国際情報特区構想の推進等によって情報通信産業の育成を目指したい。

    9. 沖縄の基幹産業としての観光のあり方
    10. 沖縄の基幹産業が観光・リゾート産業であることから、そのダイナミックな発展によって県経済全体の牽引役となることが期待される。しかし、沖縄では夏場のピーク時の観光客数に対するボトム時の比率が61%となっており、グアムおよびハワイの75%と比較しても、稼働率を改善する余地がある。今後、通年型観光地へのシフトを図らなければならない。
      このためには、航空運賃の引下げなどアクセスの改善に取り組むとともに、沖縄独自の観光資源を最大限に活用し、「観光」を広い意味での「文化交流」と捉え、エコツーリズム等の滞在型・参加型観光を促進する必要がある。さらに、沖縄を国際コンベンション都市として位置付け、2000年サミットの沖縄開催を大きな契機として、アジア・太平洋地域における有数のコンベンション機能を発揮することが望まれる。

  2. 意見交換(要旨)
  3. 経団連側:
    沖縄の企業立地は遅々として進んでいない印象を受けるが、今後、行政としてさらに打つ手はあるのか。
    安達審議官:
    沖縄への製造業立地が困難であることは十分に承知しているが、工業立地の優劣が相対化する中、決め手となるのは企業を呼び込もうとする熱意である。今後の沖縄県側の尽力に期待したい。

    経団連側:
    政府は、沖縄経済の自立化により財政依存度を引き下げたいということか。
    安達審議官:
    財政依存度を可能な限り低減するとともに高失業率を改善し、経済成長率を伸ばしたいが、今後10年で本土並みの依存度にまで下げることは失業率の急増をもたらしかねず、慎重な対応が必要である。


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