経団連くりっぷ No.122 (2000年4月13日)

国土・住宅政策委員会 地方振興部会(部会長 阿比留 雄氏)/3月23〜24日

サミット開催や長寿県としての特性を活かし、
更なる観光振興を図る沖縄


当地方振興部会では、地域の活性化に果たす観光の役割の重要性に鑑み、日本各地における観光振興の取組みを視察するとともに地元関係者との懇談会を重ねている。3月23日から24日にかけては「沖縄懇談会」を現地にて開催し、平和祈念公園や首里城など沖縄の特色ある観光資源、さらに普天間飛行場を抱える宜野湾市の現状を視察した。併せて、稲嶺恵一沖縄県知事を表敬訪問するとともに、地元関係者との懇談会を通じて、沖縄観光の現状や諸課題等について意見交換を行なった。

  1. 稲嶺知事発言要旨
  2. サミット開催に向けて、部瀬名岬にあるメイン会議場、万国津梁館がほぼ完成するなどハード面の整備は着実に進んでいる。
    課題は、国の内外から多数の政府要人、報道関係者等を迎えるホテルやプレスセンターが接遇に慣れていないため、ソフト面での受入環境を整備することである。
    しかし、サミットを契機にこうして整備されるソフトインフラは将来の発展に必ずつながると期待している。幸い、県民全体の意識も向上しつつある。小渕首相の英断を活かし、沖縄の発展に向けたステップとしたい。

  3. 沖縄県の観光振興方策について
    (大城栄禄 沖縄県観光リゾート局長他説明)
  4. 沖縄の入域観光客数は復帰前の1971年には20万人台であったが、復帰後の1972年には2倍の40万人台へ、さらに沖縄国際海洋博覧会が開催された75年には156万人へと増加した。その後、道路、港湾、空港等の公共基盤の整備等により、1984年には200万人を突破した。
    さらに、海浜リゾート施設の整備、リゾート地としてのイメージ向上等が奏効し、1991年の観光客数は300万人を達成した。1998年は、航空路線の拡充、本土・沖縄間の航空運賃の低減等の影響で年間413万人の観光客が沖縄を訪れ、昨年は2000年サミットの沖縄開催決定、「観光・リゾート沖縄」のブランド化の進展等により、年間456万人を記録するに至った。
    また、1998年3月の沖縄振興開発特別措置法改正を受け、観光振興地域制度の創設による投資税額控除、沖縄型特定免税店制度など観光の振興を図るための措置が講じられている。加えて、観光・レクリエーション活動に対する国民のニーズ定着、景気の回復基調、サミット効果等の諸要素も勘案し、2000年の訪沖観光客数は485万人を突破するものと期待されている。
    今後は、エコツーリズム、沖縄文化体験学習等、沖縄ならではの観光資源を有効に活用するとともに、サミットを契機に国際会議等を誘致するコンベンションアイランドづくりに取り組み、沖縄の基幹産業である観光をさらに振興していく必要がある。
    また、東北・北海道をはじめ、本土の高齢者を対象に、健康増進の観点から沖縄に長期滞在保養をしてもらい、新しい自分や今後の生きがいの発見を促すことを目的とした「沖縄ウェルネス計画」が来年から県で実施される予定である。こうした施策の推進によって、夏は若者、冬は中高年にターゲットを絞り、来客増加に結びつけることが可能となろう。

  5. 沖縄の地域活性化に向けた課題
    (懇談会での沖縄県経済界側主要発言)
    1. 牧野浩隆 沖縄県副知事
    2. 1999年1月の副知事就任以来、基地問題と経済振興との相関関係について、「バランサー」として取り組むことを政策理念として県政に当たってきた。基地問題は沖縄のみならず日本全体の安全保障に関わる問題である。在日駐留米軍の75%は沖縄に集中し、嘉手納などでは町の84%が基地によって占められている。こうした地域の情況下、どのような自立経済を構築すべきか真摯に検討していきたい。
      また、中小企業が99.9%を占める沖縄経済において、定期的に新規採用を行なえるだけの体力を有する企業はほとんどない。沖縄への企業誘致について、経団連の知恵を拝借したい。

    3. 崎間 晃 沖縄商工会議所連合会会長
    4. 沖縄では、戦前・戦後を通じて民間主導型経済の蓄積が乏しいため、バブル崩壊等への対応力が弱い。また、確固たる基軸製造業が存在しないため、国際的な経済変動の影響を被り易い。日本の都道府県の中でも最低の県民所得、最悪の失業率など、沖縄経済は数多くの問題を抱えている。
      さらに、米軍基地の存在による公共工事、財政投融資等に依存している基地・公共投資依存型経済から脱却しなければならない。沖縄を「永遠のぶら下がり」ではなく、日本経済を支えていく地域にすべく、経団連の協力をお願いしたい。

    5. 金城名輝 沖縄県工業連合会会長
    6. 戦後、沖縄は本土企業の消費地であって生産地であったことはない。本土復帰後、5兆円近くもの資金が沖縄の開発のために投下されたが、それが一面では沖縄経済を公共投資依存型にした。
      沖縄では、

      1. 特別自由貿易地域への製造業を中心とする企業の誘致、
      2. 情報通信産業の誘致・育成、
      3. 観光産業の振興、
      に取り組んでいるが、沖縄の産業振興について全国画一的な政策は通用しない。国主導で各県の振興を行なう従来の手法ではなく、沖縄を民主導で世界に冠たる観光地へと育成すべく、経団連も積極的に参画してほしい。

  6. 経団連側からの具体的提案

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