海洋開発推進委員会 総合部会(部会長 橋口寛信氏)/3月24日
昨年10月より産業技術戦略の全体戦略と並行して、海洋関連技術分野においても個別の技術戦略の検討が進められ、今般、とりまとめが行なわれた。そこで、当部会では、とりまとめにあたられた(社)日本海洋開発産業協会の海洋産業技術戦略推進委員会の委員長である東京大学生産技術研究所の木下 健教授より、海洋関連技術分野の産業技術戦略について説明をきくとともに意見交換を行なった。
海洋関連産業の売上高は3,500億円前後でほぼ横ばいで推移し、研究費の割合は比較的高い水準にあるが、研究が新規産業創出に十分に繋がっているとはいえない。海洋関連産業技術分野を
石炭は世界的に突出する分野であり、その技術を応用して石炭ガス化技術等の新たな展開が望まれる。石油・天然ガスは機器等で外国に追随しており、欧米の技術の改良が望まれる。すでに水深2,000m程度までの探査、掘削技術は確立されており、さらなる大水深、氷海などの極限環境、小規模石油・天然ガス田の開発技術の確立が必要である。海洋バイオマスについては、成長の早い微細藻類を中心に研究開発が進められ、国際競争力がある。
従来から沖合人工島、海上都市等多くの構想が打ち出されたが、縦割り行政の弊害により限定的であった。今後、大水深、極地等特殊条件、環境調和型の技術開発を進めると共に社会的認知を得ることが望まれる。具体的には、沖合港湾、洋上空港、海上連絡橋、海洋エネルギー基地等のインフラ、深層水利用、風力発電、廃棄物からのエネルギー回収等が挙げられる。
海洋環境分野は、教育、予算、縦割り行政の問題から、技術開発及び事業化が欧米に対して遅れており、海洋環境情報の把握のために、計測方法、計測機器、評価などの技術開発を国際標準化を視野に入れて進める必要がある。
日本は重点的な技術戦略が欠けており、国際競争力の点から遅れている。その意味で、縦割り行政の弊害を除去し、研究機関の横断的な連携による研究開発体制の構築が望まれる。具体的には海洋バイオ技術、海洋深層水、高度情報通信技術の効率的な活用が望まれる。
以上の現状分析を踏まえて、6つの戦略目標を掲げ、重点的技術分野を抽出した。
戦略目標 | 重点的技術分野 | 目的 | |
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1. | 資源・エネルギー安定供給のための海洋ポテンシャルの活用 | 海洋資源エネルギー複合的活用基地 (略称:OGSシステム) |
自然エネルギーの複合的活用により、採算性のある電力供給、レアメタル採取、管理型漁業などの実現 |
極限海域石油・天然ガス開発技術 | 大水深や氷海域石油・天然ガス生産基地の設計技術実用化 | ||
非在来型資源・エネルギー開発技術(メタンハイドレートや熱水鉱床など) | 環境保全を前提とする安全で効率的な生産事業の実現 | ||
2. | 海洋バイオ技術、高度情報通信技術などの先端的技術革新による新規産業創出 | 海洋バイオ技術の活用 | 育種技術向上、海洋植物/生物の持続的有効利用促進 |
高度情報通信技術の応用 | 防災や物流に貢献する海洋総合情報システム | ||
3. | 地球環境問題解決のための海洋ポテンシャル明確化 | 海洋環境モニタリングシステム | CO2など海洋データ計測、データベース構築、世界最先端の海洋環境評価・マッピング・変動予測事業創出 |
CO2固定化技術 | 海中/海底CO2固定化技術、環境への影響評価技術実現 | ||
4. | 沿岸海域の環境を修復・創造する海洋環境産業の創出 | 海洋環境情報取得・管理・提供 | 海洋環境広域モニタリング、情報提供システム開発 |
海洋環境診断評価技術 | 環境動態・生態系環境診断・評価技術開発長期環境動態シミュレーション技術高度化 | ||
沿岸海域環境修復創造技術 | 沿岸域流況制御・環境修復・創造技術開発 | ||
5. | 安全な食糧・水資源の安定供給 | 環境調和型生物生産システム | 流域及び海域における生態系評価及び管理技術に基づく生物生産産業の創出 |
6. | 安心・安全で質の高い生活の実現のための海洋空間活用 | 海上廃棄物発電施設 | ゼロエミッション型廃棄物発電の技術面・経済面・環境面の評価及びパイロットプラントの実施 |
防災・災害支援基地 | 多機能的防災・災害支援基地の実現 | ||
沖合交通・物流基地 | 多機能的沖合交通・物流基地の実現 |