経団連くりっぷ No.123 (2000年4月27日)

なびげーたー

今こそ「観光」の重要性を認識すべき

環境・国土本部長 林 正


観光は地域の活性化や国際交流・相互理解の促進に大きな役割を果たしており、21世紀の基幹産業として、その重要性を改めて認識すべきである。

今後の日本社会は少子高齢化、情報化等の進展を受け、大きく変容していくと考えられるが、このような状況下、にわかに観光が注目されている。

例えば、新しい全国総合開発計画(1998年3月)は従来の全総計画と異なり、観光振興に大きく焦点を当てている。また、小渕前内閣は閣議で初めて観光問題を取り上げ、1998年11月の緊急経済対策の中で21世紀先導プロジェクトの一つとして観光振興を位置付けた。さらに、同対策に呼応して設置された産業構造転換・雇用対策本部においては、旅行平均宿泊日数の増加や祝日三連休化法の効果により9万人の雇用創出を見込むなど、政府は観光振興に積極的に取り組む姿勢を見せている。また自民党も、観光特別委員会において観光の振興を提言する中間とりまとめを行ない公表した(1999年8月)。

こうした関係各方面の観光に対する認識の高まりを受け、経団連でも、わが国観光のあり方に関する検討を昨秋より本格的に開始した。地域の活性化に観光が果たす役割の重要性に鑑み、国内外の有識者からヒアリングを重ねるとともに、地域の資源を活かした日本各地の観光振興の実態および課題を把握すべく、既に九州地方、中部地方、沖縄県において現地視察・意見交換会を開催したところである。

そもそも観光は、旅行総費用額として約20兆円の直接効果をもたらすとともに、波及効果として約50兆円の生産高と約420万人の雇用創出が期待される裾野の広い産業である。今後、経済的・時間的に余裕のある高齢人口の増大に伴い、観光関連市場の更なる拡大が期待されることから、21世紀の基幹産業の一つになると目されている。加えて、訪日外国客に対するアンケートでも、日本は「人々が親切で好感の持てる国」No.1として認識されており、観光が国際相互理解の増進に寄与する効果の大きさは看過できない。

しかしながら現状では、邦人海外旅行者数1,600万人に対して、訪日外国人旅行者数は400万人(世界第32位)に過ぎす、図らずも「顔の見えない日本」を裏付ける結果となっている。今後は、本年の九州・沖縄サミットや2002年ワールドカップ等を契機として「魅力ある日本」を対外的にアピールするとともに、国際ハブ空港等インフラ整備等の促進をはじめ、観光についての高コスト構造を是正する必要がある。

本年秋には、政府の観光政策審議会において、21世紀初頭における観光振興方策について答申される予定となっており、経団連としても、21世紀における基幹産業として、また、まちづくりの重要な鍵として、わが国観光のあり方について提言していきたいと考えている。


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