経団連くりっぷ No.123 (2000年4月27日)

第16回評議員懇談会(座長 那須 翔 評議員会議長)/3月30日

アジア経済、環境問題、行政改革、人材育成について懇談


評議員約100名の出席を得て、評議員懇談会を開催し、アジア経済再構築、環境問題、行政改革、人材育成に関する経団連の取組みを報告するとともに、懇談した。

  1. 那須評議員会議長挨拶
  2. 構造改革の断行、科学・技術基盤の強化、人材の育成など、わが国が直面する課題は多岐にわたる。経団連には、問題を横断的に捉えた解決策を提示するとともに、急速な環境変化に一層迅速に対応願いたい。

  3. 今井会長挨拶
    1. 景気は緩やかながら着実に回復している。設備投資とともに消費が回復すれば、構造改革を加速化することによって内需主導の経済成長が実現できる。その場合、2000年度GDP成長率の政府見通し1%の達成は無論、年度後半には2%台乗せも可能であろう。

    2. 当面は景気中立的な財政運営を心がけ、腰折れが懸念される場合のみ、予備費の執行や補正予算等で対応していけば良い。内需主導の経済成長が確認された後は、財政再建を視野に入れた経済運営を心がけるべきである。

    3. 内需主導の経済成長を実現する上で3つの構造改革の課題がある。第1は、会社分割法案の早期成立とそれに係る税制改正、連結納税制度の導入などの税制・法制改革である。第2は、規制改革である。新事業、新規雇用の創出の観点から、一層力を入れて取組んでいきたい。第3は、社会保障制度改革である。年金、医療、介護にわたって給付を合理化・効率化する一方、負担のあり方についても抜本的に検討していかなければならない。また、確定拠出型年金法案を早期に成立させるとともに、厚生年金基金の代行返上問題、特別法人税の撤廃問題も決着させる必要がある。

    4. 先般アジアを訪問したが、欧州、米州がそれぞれ地域間連携を深める中、わが国にとってアジア、とりわけASEANとの関係強化は極めて重要であり、一層の緊密化に努めたい。

  4. 活動報告
    1. アジア経済の再構築:
      熊谷副会長/アジア・大洋州地域委員長
      1. アジア諸国経済が好転の兆しを見せている今こそ、アジア諸国との協力関係を緊密にしていく必要がある。このような認識の下、第1に、わが国が経済活力を維持するための基盤構築を急ぐ必要がある。第2に、アジア諸国の実情を踏まえつつ、貿易・投資の自由化を推進することが重要である。一方、アジア各国が金融システムの健全化と為替の安定化に引き続き取り組むとともに、わが国として円の利用促進を図る必要がある。第3に、アジアの産業競争力を強化するためには、わが国企業がアジアで事業を拡大するとともに、アジア諸国の民間債務問題の解決、投資環境の改善、次世代インフラの整備が求められる。また、アジアにおける人材育成も重要である。

      2. なお、経団連としては、東南アジア諸国との文化交流にも注力し、相互理解を深めていく必要がある。

    2. 環境問題への取組み:
      辻副会長/環境安全委員長
      1. 地球温暖化問題について、経団連では、2010年にCO2排出量を1990年レベル以下に抑えるよう努力するとの産業界としての目標を掲げている。産業界からの1998年度の排出量は、1990年度比で2.4%減少、1997年度比で6.0%減少した。引き続き着実な対応をお願いしたい。

      2. 廃棄物問題について、経団連では、産業廃棄物最終処分量を2010年度に1990年度比75%削減するとの目標を設定しており、毎年定期的にフォローアップしていく。協力をお願いしたい。

      3. 化学物質問題について、経団連では、環境への排出・移動量を把握し、環境汚染物質の適正なリスク評価・管理を行なうための調査を実施している。取扱い実績のあった物質の約3割で排出量の減少が見られるなど事業者による抑制の成果が表れている。

      4. なお、ディーゼル車の排出ガス削減には総合的な取組みが必要であり、関係者の協力をお願いしたい。

    3. 行政改革の推進:
      飯田 行政改革推進共同委員長
    4. 行政改革については、この数年で中央省庁等改革、地方分権、情報公開などについて一定の成果があがってきたが、規制改革については、先行き不透明感が増している。規制改革が中途半端なものとなり、経済構造改革に水を差す結果となることを強く懸念している。明日(3月31日)、政府は規制緩和推進3か年計画の再改定を閣議決定するが、不十分なものは引き続き実現に向けて働きかけていきたい。規制改革は核心に迫るにつれ、「総論賛成、各論反対」に陥りがちであるが、経団連としては一致団結して規制改革の断行を訴えていく所存であり、支援・協力をお願いしたい。

    5. グローバル化時代の人材育成:
      浜田 人材育成委員長
      1. 主体性、プロ意識、知力といった基礎能力に加え、指導的立場に立つ人材には、将来ビジョンを提示したり、各国のリーダーと渡り合える力などが必要である。

      2. こうした人材を育成するには、教育界に競争原理を導入し、若い人達に多様な選択機会を与えることなどが必要である。また、

        1. 教育の情報化、
        2. 英語等のコミュニケーション能力の強化、
        3. 創造性の涵養、
        4. 産業技術を支える教育の強化、
        5. 基礎学力の維持・向上、
        に産業競争力の観点から緊急に取り組むべきである。

      3. 経営者や管理職が学校へ講師として出かけるなど、産業界による教育界への協力も不可欠である。今後、賛同企業を募り、実行していく予定であり、支援をお願いしたい。

  5. 評議員から出された意見
  6. アジア経済の再構築に関連して、

    1. 現地産業界の交流の場への日本企業の積極的参加の必要性、
    2. アジア各国におけるインフラ整備、人材育成等の必要性、
    3. インドネシアにおける政治的安定の重要性、
    について指摘があった。また、塗料業界の環境問題への取組みについて紹介があった。


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