経団連くりっぷ No.123 (2000年4月27日)

統計制度委員会・同企画部会(委員長 井口武雄氏、企画部会長 飯島英胤氏)/4月5日

最近の景気と経済統計

−村山日本銀行調査統計局長よりきく


統計制度委員会・同企画部会では、日本銀行の村山昇作 調査統計局長を招き、最近の景気と経済統計について説明をきくとともに意見交換を行なった。

村山局長説明要旨

  1. 今後想定される景気回復シナリオ
  2. わが国の景気は、現在持ち直しの局面にある。今後の本格的な景気回復は、企業部門から始まると思われる。これまでの景気対策・ゼロ金利・リストラの進展・輸出増等によって企業収益が回復し、これが徐々に設備投資資金に回る。その後、個人所得が底を打って、個人消費が回復していくのではないか。

  3. 経済指標の見方
  4. 現在、強い経済指標と弱い経済指標が混在する状況にあるが、うち弱い指標に関する見方を述べる。

    1. GDP(家計調査):
      GDPは2期連続マイナスであるが、その6割を占める個人消費を計算するための基礎統計である家計調査は、下方バイアスがかかっている可能性がある。

    2. 消費者物価:
      消費者物価は1999年あたりから下落しているが、生鮮食料品を除けば下落は僅かである。景気判断のためには、天候要因で左右される品目は除外すべきである。

    3. 卸売物価:
      卸売物価には総合卸売物価と国内卸売物価がある。総合卸売物価は99年あたりから下落しているが、国内卸売物価の下落は僅かである。国内の物価は国内卸売物価指数で判断すべきである。

    4. マネーサプライ:
      マネーサプライとGDPは、常に教科書通りの関係で動くとは限らない。

      1. 貨幣を保有する動機には、予備的動機、取引動機等がある。今後、取引動機に基づく貨幣需要は増大するであろう。しかし、予備的動機に基づく貨幣需要は、一連の金融安定化措置により、減少傾向にある。取引動機に基づく貨幣需要の増加よりも、予備的動機に基づく貨幣需要の減少の方が大きければ、景気回復下でもマネーサプライの減少が起こることになる。事実、韓国でもこうした事態が発生している。

      2. 企業においては、設備投資を抑制する一方でキャッシュフローが回復してきており、今や借入れせずに設備投資を現在の4割程度増やせる状況にある。今後の景気回復過程においては、貸出し増によるマネーサプライの増加は起こりにくいであろう。

  5. 統計整備に関する日本銀行の取組み
  6. 日本銀行調査統計局では「統計は社会の公共財」との認識の下、正確・的確な統計の提供、ユーザーの利便性向上、統計収集・作成事務の合理化・効率化、機密管理の徹底、透明性の向上、中立的な統計公表姿勢を念頭に、統計の収集・作成・公表を行なっている。


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