経団連くりっぷ No.123 (2000年4月27日)

企業行動委員会、他(司会 和田専務理事)/4月5日

企業の社会的責任をめぐる国際的潮流


企業行動委員会では、社会貢献推進委員会、海外事業活動関連協議会(CBCC)と共同で、企業倫理に関する国際会議であるコー円卓会議(CRT)のドゥハルス、タランティーノ両副議長他から、企業の社会的責任をめぐる国際的潮流やコー円卓会議の活動内容等について説明をきいた。

  1. コー円卓会議側説明要旨
    1. コー円卓会議の活動
    2. コー円卓会議は、1980年代に日本と欧米の間で貿易摩擦が起きた際、日米欧の経済人同士がお互いの意思疎通を深めようとスイス・コーに集まったことからスタートした。その後も毎年会合を続けた結果、相互理解が深まり、1994年には円卓会議として「共生」と「人間の尊厳」の二つの基本理念に基づく「企業の行動指針」を作成・公表した。同指針は、これまで15ヵ国語に翻訳され、欧米、アジア諸国等に広まりつつある。

    3. グローバル化と企業の社会的責任
    4. 経済のグローバル化が急速に進み、企業は世界中で投資・貿易活動を行なうようになった。自由貿易が人々の生活水準を高めたことは事実だが、グローバル化の影響が全てプラスだとはいえない。危険な労働環境、環境破壊、労働機会の不平等、セーフティネットの不足等の問題は途上国だけではなく先進国内部にも存在する。グローバル化の利益を全ての人々が享受できるように、政府のみならず、企業リーダーも責任を持っている。社会的責任を自覚した企業の行動と良好なコーポレート・ガバナンスの実現がグローバル化がより良い結果を生み出すために不可欠である。

    5. 社会的責任投資
    6. 現在、消費者、従業員、地域社会、政府、NGO等々、企業に対する株主以外のステークホルダーズの影響力が著しく高まっており、その結果、企業の側でも自らの活動の評価への関心が高まっている。そうした中で、コー円卓会議の「企業行動指針」をベースに、各企業が社会的責任を果たしている度合いを評価・測定しこれに基づいて投資を行なうファンドづくりが米国で進められている(グローバル・バリュー・ファンド)。すでに社会的責任に関心を寄せる企業は、企業倫理やコーポレート・ガバナンス等、非財務的な事項についても自らの進捗状況を公表している。日本でも一部の企業が取組みを始めており、こうした努力は今後一層広がるだろう。

  2. 次回コー円卓会議等
  3. 本年9月にシンガポールにおいてコー円卓会議が開催されるが、コー円卓会議の日本側副議長でもあるNEC・金子取締役相談役から「コー円卓会議の活動は日本企業にとっても非常に有益である。そこで、日本側の窓口として国際MRA日本協会内に企業行動部会(CRT部会)を発足させたので関心がある企業は是非参加していただきたい」との呼びかけがあった。


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