経団連くりっぷ No.123 (2000年4月27日)

国際熱核融合実験炉(ITER)日本誘致推進会議(会長 豊田名誉会長)/3月31日

4月にITER建設計画に関する非公式政府間協議を開始


国際熱核融合実験炉(ITER)計画は、未来の人類の恒久的なエネルギー源の一つとして期待される核融合エネルギーの科学的、技術的な実現可能性を実証することを目標として進められている。ITER日本誘致推進会議では、井上信幸 原子力委員会核融合会議座長(京都大学エネルギー理工学研究所所長)、科学技術庁の中澤佐市 審議官よりITER計画の推進状況等について説明をきくとともに意見交換を行なった。

  1. 中澤審議官説明要旨
  2. 2000年1月、東京に日本、EU、ロシア3極の代表者が参集し、今後のITER計画の進め方について協議を行なった。当初約1兆円とされていた建設コストを約56%程度まで低減した概要設計報告書が報告されたこと等が主な成果である。また、4月には、ITER建設計画に関する非公式政府間協議を開始することになった。
    昨年の6月に「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」の見直しに向けた検討が開始された。ITERについても検討しており、新長期計画は2000年末までに策定される見通しである。
    ITER計画について、自民党幹部クラスによる勉強会が行なわれているが、昨年8月に吉川弘之 日本学術会議会長を講師に招いたところ、ITERへの投資を未来の人類への保険料と位置づける等、ITERを積極的に評価する説明内容であり、出席者に大きな感銘を与えた。

  3. 井上座長説明要旨
  4. 核融合エネルギーは将来のエネルギー源の有力な選択肢として有望である。実験炉ITERにおいて、核融合燃焼プラズマ制御技術と、統合された核融合装置としての技術的成立性を確認することにより、核融合実用炉の技術的実現性を見通すことができる。
    核融合開発はプラズマ理工学や核融合炉工学を通して、幅広い学術分野と関わり、各々の領域の拡張や深化に貢献する。さらに、わが国には核融合開発を強力に推進する学界、産業界の堅固な組織基盤があり、優秀な人材を養成している。核融合研究の基盤を充実し発展させるには、大学の研究と企業の技術開発の絶え間ない活性化が重要である。

  5. 意見交換(要旨)
  6. 経団連側:
    日本の中で、ITERの推進について完全に一本化しているわけではないと聞くが、どうか。

    井上座長:
    核融合の世界では推進で一致している。但し、科学技術の基礎研究は核融合以外にも種々あるだろうという批判、また、国立大学予算を核融合に重点的に使うことによる他の科学技術の研究への影響を懸念する声がある。こうした批判に対しては、巨額といわれる建設コストについても、10年で、しかも日本、EU、ロシアの3極で均せばさほど大きな数字にはならないと説明している。


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