環境安全委員会(委員長 辻 義文氏)/4月11日
経団連は、1998年度、社会的責任を果す観点から産業廃棄物不法投棄原状回復事業を行なうための基金への出捐を行なった。不法投棄が小口・多発・悪質化する中、同基金の扱う原状回復事業の増加が見込まれることから、廃棄物部会を中心に産業界の基金への協力について検討してきた。その結果をふまえ、環境安全委員会を開催し、同基金への出捐について審議し、経団連として二回目の資金拠出を行なうことが承認された。当日は、厚生省生活衛生局の岡澤和好 水道環境部長より原状回復基金事業の見通しについてきくとともに、同部長より廃棄物処理法改正の概要、また、通産省環境立地局の中島一郎 局長他より改正リサイクル法案ならびに循環型社会形成推進基本法案の概要をきいた。
不法投棄原状回復基金制度は、平成10年6月以降に生じた不法投棄案件に対し、都道府県が除去事業(原状回復)を行なう際、不法投棄者が不明、あるいは摘発しても資力不足で事業費を徴収できない等の場合に、都道府県に対し資金援助を行なうもので、平成9年の廃棄物処理法により制度化された。厚生大臣の指定する産業廃棄物適正処理推進センターに国と産業界が1:2の割合で、平年度、国が2億円、産業界が4億円、都道府県が事業を行なう段階で2億円、あわせて8億円を拠出することになっている。都道府県は原状回復事業を行なう際に事業費の4分の1を出し、残りの4分の3は基金から補助する。
これまでのところ、立ち上がり時期であることや、この制度に対する都道府県の理解が進まなかったことから、基金を使って行なった原状回復事業は小規模案件が3件だけだったが、現在滋賀県から1億8,400万円規模の原状回復案件への協力要請が来ており、基金を利用する見通しである。今後、各都道府県からの協力要請がかなり増えることが予想されるため、産業界には是非とも二回目の出捐をお願いしたい。
今回の法改正では、排出事業者の責任強化と適正処理のための施設・処理体制の整備とを車の両輪と位置づけている。
多量排出事業者の処理計画の策定
多量の産業廃棄物を生ずる事業場を設置している事業者に対し、産業廃棄物の減量その他の処理に関する計画を作成して都道府県知事に提出し、計画の実施状況を報告する義務を課した。
産業廃棄物管理票制度の見直し
今回の法改正により、排出事業者に対し、最終処分までの処理が適正に行なわれたことを産業廃棄物管理票(マニフェスト)により確認することを義務づけた。
原状回復措置命令の対象拡充
今回の法改正により措置命令の対象者を拡大する。新たに対象となるのは、マニフェストの確認義務に違反した者、不適正処分に関与した者(土地の提供者等)、不法投棄などが行なわれることを知りつつ処理委託契約をした者、相場に比べて著しく低い価格での契約をした者、等である。
廃棄物処理センター制度の見直し
従来は、地方公共団体と民間事業者が共同して設立した財団法人を支援する仕組みだったが、対象を拡充し、国または地方公共団体からの出資・拠出のある財団法人・株式会社、PFI選定事業者とした。各県に一ヵ所という設置箇所数制限も撤廃した。
法改正により、リサイクル対策を強化するとともに、廃棄物の発生抑制(リデュース)対策や、部品等の再使用(リユース)対策を講じることとする。
製品対策
副産物(産業廃棄物)対策
産業廃棄物の最終処分量削減のため、工場等で発生する副産物(スラグ、汚泥等)について、生産工程の合理化等による発生抑制、発生した副産物の利用促進に事業者が自主的に計画を策定し取り組むことを義務づけた。対象として、鉄鋼業、紙・パルプ製造業、化学工業、非鉄金属製造業等を想定している。
リサイクル法は方向を示し、具体的な取組みの内容は事業者の自主的な取組みに委ねる。今後、事業者の取組みの具体的内容を政省令で定める過程でも、産業界と意見交換していきたい。
この法律は、廃棄物・リサイクル政策を一体として捉え、循環型社会の実現のために国・地方公共団体・事業者・国民の果すべき責務を明らかにするとともに、プログラム規定という位置付けのもとに国の施策の基本となる事項を定めている。国民的に循環型社会に向けた歩みを着実に進めることになろう。現在、与党内での調整が行なわれており、今国会での成立が見込まれる。