経団連くりっぷ No.125 (2000年5月25日)

なびげーたー

来年4月1日の消費者契約法の施行に備えて

経済本部長 角田 博


消費者契約法をプラス・サムにして生かすためには、消費者契約に対する自己責任原則を確立し消費者・事業者双方の信頼感を高めることが重要。

消費者契約法が4月28日の参議院本会議で可決成立した。来年4月1日の施行日以降に結ばれる消費者契約から適用される。

国民生活審議会では、幅広い消費者トラブルに対応しようとする考えと、包括的な民事立法だから、予見可能性の高いミニマム・ル−ルとし、悪徳商法は別途業法等で 個別に対処すべきという考え方に分かれた。

消費者契約法の政府案は、比較的予見可能性の高いものだが、新聞の社会面等では恋人商法や電話によるしつこい勧誘に対処できない等の批判があった。

4月25日には参議院の経済・産業委員会で参考人質疑が行なわれ、筆者は宮部消費者部会部会長の代わりに出席して、松本一橋大学教授、岡田消費生活相談員、藤森弁護士とともに、自民党畑議員、民主党木俣議員等6人の議員による3時間に及ぶ参考人質疑に応じた。

民主党は独自の法案を提出し、共産党も政府案に反対であり、事業者の立場を代弁して厳しい対応を迫られた。

筆者が強調したのは、あらゆる悪徳商法に対応しようとすれば、大部分の善良な事業者の事業に不安定性をもたらし、これに対応するための膨大な社会的コストがかかることである。

さらに政府が逐条解説のコンメンタ−ル等を作成し、事業者、消費者双方にとって予見可能性を高め、お互いの信頼に基づいた消費者契約が締結されて消費が盛り上がる、いわゆるプラス・サムのゲームにすべきと強調した。

同質の国民から成る島国、日本では契約に対する考えが甘いことは否めない。今後インターネットを通じた国際的な消費者契約の締結が増える中で、甘えを許さない自己責任に基づく契約という考え方の確立が求められている。

同法の付帯決議では、裁判外紛争処理機関の充実・強化、消費生活センター・苦情処理委員会等への支援、消費者教育への協力、差止請求に係わる団体訴権についての検討、5年を目処に見直しを含め適切な措置を取ること等を求めている。

施行に当たって、事業者は、まず第1に、新しい法律に照らした自社の販売方法の点検や、約款の見直しと、関係者への立法趣旨の周知徹底が求められる。松本先生は業界別に学者を含めた中立的な標準約款、販売ルール検討機関を設けてはどうかと提案されている。

第2は、各社の顧客相談室等の充実とそれを通じた消費者教育への協力である。

第3は、各業界団体にオンブズマンのような統一的な消費者相談窓口を設置し、共同で問題解決を図るようにしてはどうかという考えもある。今後以上のような自主的取組みが増えることを期待したい。


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