経団連くりっぷ No.125 (2000年5月25日)

新入会員代表者との懇談会(司会 内田公三 事務総長)/4月20日

新入会員代表者より当会に対する率直な意見・要望をきく


経団連では、新しく入会した会員の代表者から、各企業・業界の当面する課題や要望等をきき、活動に反映させている。当日は新入会員代表者7名および今井会長、内田事務総長ほか事務局役員5名が出席し、率直な意見交換を行なった。

○ 新入会員代表者発言要旨

  1. 朝日航洋 塚田 彊 代表取締役専務
  2. 当社の事業は、ヘリコプターの運航と測量・地理情報事業に大別される。
    ヘリコプター事業では常時約100機を運航しており、世界でも5本の指に入る。欧米ではハブ空港へのヘリ乗入れが一般的だが、日本では未だ許可されていない。僅かなスペースで離発着できるヘリの特性を生かすための規制緩和が進めば、運賃を大幅に下げることも可能になる。また、自治体等が所有している防災用ヘリも民間に移管すれば効率的な運航が可能となる。欧米で普及している医師・ナースを乗せたドクターヘリが本格的に導入されれば、救急時の延命率や治癒率が画期的に改善される。
    経団連は地理情報システムの高度利用に関する提言を出したが、進捗状況は芳しくない。フォローアップをよろしく願いたい。

  3. 扶桑レクセル 安倍徹夫 社長
  4. 当社は戦後、旧満州鉄道の幹部が会社を興し、その後プラント事業で基盤を築いた。1984年に住宅部門を設立し、今日では首都圏第5位のマンション供給を行なっている。
    日本と欧米では住宅に対する考え方が根本的に異なる。わが国の場合、景気への波及効果が大きいことから主に経済政策として捉えられるが、欧米では豊かな生活を営むための基盤整備との見地から文化政策として取りあげられている。わが国の場合、好・不況によって住宅税率が上下したりローン控除などの優遇措置もくるくる変わる。これに対し欧米では、税率が抑えられ、関連制度も充実している。住宅の質の向上が叫ばれる今日、時限的な発想を改め、恒久的な政策に転換願いたいと考える。

  5. 日本グローバル証券 原 進 社長
  6. 業界としての一番の問題は、キャピタルゲイン課税である。欧米では一般的に軽減の方向に進んでおり、市場の活性化に貢献している。
    東京証券取引所は、ニューヨークに次ぐ大市場で、成長の余地を残している。米国では、インターネットの普及に伴い、取引所を通さない私設電子取引が増えており、相当な危機感を持っている。しかし、顧客層の拡大も図られている折、わが国の証券業界もきちんとした対応が求められている。
    従来の証券会社は労働集約的な要素が強かったが、最近はインターネットを利用した取引が増加している。対面およびネット販売の片方だけでは顧客対応が不充分となりつつあり、カスタマーマーケットの分析がますます重要になってきている。

  7. アジア航測 横田直彦 社長
  8. 当社は建設関連業に属しており、測量、建設コンサルタント、地質調査の3事業に大別される。社名は「航空機を使用した測量」に由来しているが、現在では衛星画像による情報収集に移りつつある。最近は地理情報をデジタル化し利活用するGIS事業が進展しており、上下水道などの施設管理、道路などのインフラ開発、防災、環境保全など利用範囲は多岐にわたる。
    業界の問題点は、地理情報の著作権の取扱いにある。著作権は官公庁などの発注者に帰属するため、所有者以外はその情報を活用できない。業界としても体質改善をすすめ、諸規制を見直して情報の有効利用とその深化に事業の中心を移す必要がある。
    建設関連業は官公庁との取引が多いが、発注方式の改善も大きな課題だ。現行の競争入札制度は価格一辺倒で、技術面での評価の視点が欠けており、改善が望まれる。

  9. 日本衛星放送 佐久間昇二 社長
  10. 当社の設立に当っては、経団連の故稲山会長、花村副会長に尽力いただき、現在も斎藤名誉会長に当社の会長に就任していただいている。
    放送事業は巨額投資を必要とするため、その回収に時間を要する。当社もその目処がついた矢先に、アナログからデジタルへの転換という大きな波を受け、事業再構築の途上にある。デジタルネットワーク化の流れの中で軸足を失わないよう、放送、エンターテイメントコンテンツ、会員制ビジネス、インターネットの4つをキーワードに新時代にマッチした事業展開を模索している。
    BSを使った唯一の民間有料放送会社という異質な存在であるが、経団連への参加を通して多くの事を吸収したいと考えている。

  11. ニッコクトラスト 石川充幸 社長
  12. 当社は1941年創業の産業給食の会社で、全国約1,000の事業所から委託を受けて事業を展開しており、オフィス・工場・寮・保養所・病院・学校ならびに一般レストランなど多様な顧客ニーズに対応している。最近は、時節柄、事業所どうしの合併や統廃合が多く、企業向けの受注件数は減少傾向にある。他方、病院・学校・福祉施設からの受注は増加傾向にあり、社内もこれまでのエリア別管理から顧客の業態に合わせたシステム体系に移行している。
    生ごみ処理の問題が現下の大きな課題だが、単独で解決するには問題点が多く頭を悩ませている。

  13. 新機能素子研究開発協会 池田徳三 専務理事
  14. 当協会は、次世代半導体の研究開発を任務としている。半導体やLSI、コンピュータなどの分野は、技術革新のスピードが速く、数年前には夢物語であった事が次々と実現している。例えば、自動翻訳システム等はいよいよ実現に近づき、世界中の人々が携帯電話、さらには補聴器位の大きさで、言葉の壁なしにコミュニケーションできる時代が見えてきている。
    翻って、わが国の半導体産業は今日、欧米各国に大きな格差をつけられている。しかし昨年来、国をあげて共通の危機意識が確認され、産学官連携が本格化し始めている。うまく行けば、再び世界への復活も近いであろう。
    経団連には、将来の日本経済のあるべき姿を描いて、正論を進めていただきたい。


くりっぷ No.125 目次日本語のホームページ