経団連くりっぷ No.125 (2000年5月25日)

WTOサービス自由化交渉に関する懇談会(座長 太田 元 参与)/4月18日

サービス自由化交渉の進捗状況

−外務省 高瀬サービス貿易室長よりきく


外務省経済局の高瀬 寧サービス貿易室長より、特定約束委員会、GATS規則作業部会などサービス貿易理事会の下部組織の活動を含め、WTOのサービス貿易自由化交渉の最近の状況について説明をきいた。WTOでは年内にサービス交渉の進め方について大枠を固めた上で、来年3月より本格的な交渉に入るべく準備を進めている。

  1. サービス貿易理事会特別会合
  2. さる4月14日、ジュネーブにてサービス貿易理事会特別会合が開催され、交渉方式を中心に今後のサービス自由化交渉の進め方に関するロードマップを検討した。これは年内にロードマップについての提案を行なった上で、2001年3月を目処に本格的な交渉に入るのが狙いである。しかし、先進国側がこのロードマップに自由化約束に関する具体的提案を盛込みたいのに対して、途上国側には交渉の指針など技術的な議論のみを行ない、具体的な約束内容に踏み込むことを避けたいという思惑がある。このように、先進国と途上国との間には意見に食い違いがある。5月下旬の次回サービス貿易理事会特別会合の場で合意できるよう努力していくことが重要である。

  3. 特定約束委員会
  4. 特定約束委員会では、約束表の分類等を議論しているが、エネルギー・サービスの分類が一つの論点となっている。すなわち、約束表上「エネルギー・サービス」というまとまった分類が存在せず、関連分野がバラバラに記載されているため、まずその整理が課題である。また、エネルギー分野は、製造業であるのかサービスであるのかという線引が難しい。
    エネルギー・サービスを実施する上で必要とされるその他関連サービスをも併せて自由化するという「クラスター・アプローチ」の採用を主張する加盟国もある。特に米国は、クラスターアプローチを採用することで、交渉方式を議論する段階で具体的な自由化要望を明示し、本格交渉が開始すると同時に各加盟国に自由化を要求する狙いであろう。

  5. GATS規則作業部会
  6. GATS規則作業部会では、特にセーフガードをめぐる議論が活発である。セーフガード措置の発動要件を客観的基準に基づいた厳しいものとしていくことが重要であるが、サービス貿易は量が計測しにくい、モノに比べて統計が整備されていない、といった特有の問題がある。アセアン諸国がセーフガードの規則策定に積極的であるのに対して、先進国側はサービス全般に一般的にセーフガード措置が適用されること等を懸念しており、調整が必要である。


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