経団連くりっぷ No.126 (2000年6月8日)

経団連第62回定時総会

森 内閣総理大臣

来賓挨拶

日本新生のため構造改革を果敢に進める

内閣総理大臣 森 喜朗

私は、小渕前総理の意志を継ぎ、21世紀におけるわが国の未来が確固たるものになるよう全身全霊を傾けて国政に取り組む覚悟である。

さて、今取り組むべき第1の課題は、わが国経済を本格的な回復軌道に乗せ、新たな発展に向けた道筋を切り拓いていくことである。雇用情勢は依然厳しいが、本年に入ってから企業収益や設備投資などが着実に前向きの動きを示し始めている。こうした動きを大きな流れにできるか否か、今まさに正念場を迎えている。このため政府としては平成12年度予算の着実な執行に全力を尽くすとともに、日本経済の新生に向けて経済の構造改革を一層加速していきたい。

今、最も重要なことは官民それぞれがわが国将来の発展に向けて新たな一歩を踏み出すことである。さる5月22日の産業競争力会議においても今井会長はじめ多くの方から、IT革命に果敢に取り組むことが急務であるという意見をいただき、また、総合的な技術革新、人材の育成、福祉、介護分野における新産業の育成などの重要性についてご指摘いただいた。特に、IT革命への取組みは産業競争力強化や産業の新生のために不可欠であると思う。IT革命を起爆剤としながら、環境、高齢化などの課題に応えて21世紀を担うリーディング産業を生み出すための環境整備を図りたいと考えている。

このため、私は小渕前総理の打ち出されたミレニアムプロジェクトを継承しつつ、ITを軸としてこれをさらに発展させ、教育や福祉にまで視野を拡大させた日本新生プランを作成しようと考えている。経営者の皆様も、今こそわが国経済の将来に自信を持ち、新たな発展に向けて創意と起業家精神を如何なく発揮してほしい。

第2の課題は、わが国経済社会の思い切った構造改革に取り組むことである。内閣発足にあたり、経団連からは産業競争力強化などの構造改革案件に取り組むべきという励ましをいただいた。私自身、戦後50年を経て、国の驚異的な発展を支えてきたシステムやものの考え方の多くが時代に適合しなくなってきたと強く感じている。こうした思いから、私は森内閣を「日本新生内閣」と位置づけ、経済構造改革、社会保障改革、教育改革などわが国社会の構造改革に果敢に取り組むことにしている。改革は時として痛みを伴うが、国民が力を合わせてなすべき改革をすれば、わが国の将来は揺るぎないものになると確信している。

特に教育改革については、最近の信じられないような数々の少年事件を見るにつけ、早急に取り組まなければならないと思う。そういう観点から本年3月に発足した「教育改革国民会議」には、今年夏ころを目途に中間報告を提出していただき、広く国民の意見をききながら教育改革を推進していきたい。

さらに、国民生活に大きな影を落としている老後の不安と雇用の不安に的確に応えていくことが現在の重要な課題である。老後の不安に関しては、年金、医療、介護などの諸制度について横断的な観点から検討を加え、持続的、安定的で効率的な社会保障制度の構築をはかるとともに、雇用の不安に対しては、民間や市場の機能を最大限に活用しつつ、雇用の確保に万全を期していく所存である。

最後に、この7月には小渕前総理が情熱を傾けて決断された、「九州・沖縄サミット」が開催される。それに先立ち、先般私はG8各国を訪問し、21世紀に向けて平和と繁栄のために各国、そして国際社会は何をすべきかという点に関して忌憚のない意見交換を行なってきた。

IT革命はサミットにおいても最重要課題の一つとして取り上げられる予定である。私はサミット議長としてIT革命の持つ光と影の部分をバランスよく取り上げ、世界に向けて建設的なメッセージを発信したいと考えている。この他にもわれわれが乗り越えねばならない多くの課題があるが、各国首脳との個人的信頼関係を基礎として、これらを着実に解決し、「九州・沖縄サミット」が大いなる成果をあげるよう力を尽くしていく。

わが国および国際社会の輝かしい21世紀を、責任もって切り拓いていくことは、この大切な時期に政権を託された私ども政府与党の使命である。ご支援とご協力をよろしくお願いしたい。


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