経団連くりっぷ No.126 (2000年6月8日)

経団連第62回定時総会

深谷 通商産業大臣

来賓挨拶

21世紀に備え山積する課題の解決に尽力

通商産業大臣 深谷隆司

産業競争力会議で提言された「産業技術力強化法」を今国会で成立させた。同法は、今後、産官学が一体となってわが国の技術的な水準を高めていこうとするものである。異例の早さで成立させたことに、さる5月22日開催の同会議で出席の各位からおほめのことばをいただいた。今後とも皆様からいただいた提言を大事に受けとめ、政治に反映させたいと意を新たにした。

21世紀も目前である。今私たちがその時代に向けて、やるべきことをきちんとやっていかないと新しい時代に日本は立ち遅れてしまう。そういう意味で数々の政策課題に鋭意取り組んでいるところである。

ミレニアムプロジェクトは小渕前総理が提唱したものだが、まさに千年期ごとの大きな転換の中で新しい技術革新が必要と考える。例えばゲノム・プロジェクトは、大変進んでおり、人間の遺伝子の配列の解明で、健康で長生きできる道が開かれることが期待される。こうした技術革新をいろいろと進めなくてはいけないと思っている。

次に、エネルギー問題だが、石油は海外からの輸入に頼っており、これを補うために安全を確保しながら開発してきたのが原子力エネルギーである。東海村の事故等で原子力発電の危険性が国民の心に宿ってしまったのが残念である。東海村の例と原子力発電所とは全く異質のものである。原子力発電所は、多重防御で安全性は確保されている。私どもは一層の安全確保に努めるとともに国民の理解を求めていきたい。天然ガスやジエチルエーテルといった新しいエネルギーの開発も積極的に行ない、21世紀はエネルギーは大丈夫だという状況をつくりたい。

国際関係については、自由な貿易が保証されるようなルールづくりをWTOで進めている。昨年12月のシアトル閣僚会議は、残念ながら決裂する結果となった。その最大の問題の一つはアンチダンピングであり、私は、アメリカの一方的な主張は世界全体の意に反すると考えている。過日、ASEANプラス3の閣僚会議に参加したが、共同声明に、アンチダンピング協定を含む既存のルールを改善すべきという内容を盛込んだ。自由な貿易をするためにこの問題はよりアメリカの理解を得る必要がある。6月5日からはオーストラリアでAPECの貿易担当閣僚会議があり、バーシェフスキーUSTR長官などと話し合う予定にしている。2国間の自由貿易協定を含め、わが国が通商上十分に活動できるような体制をきちんと築き上げ21世紀に備えていきたい。

最後に、日本の経済や将来について、昨今は危機感や悲観論が横行しているのが気になっている。国民は1,300兆円を超える個人資産や外貨、そして人材という財産がある。こうした財産を大事にしながら政治や行政が果敢に時代に挑戦していけば、必ずや日本の将来は安定し、輝かしい21世紀になると確信している。

小渕前総理の残した「立ち向かう楽観主義」を大切にして、一層の努力をしていくので、今井会長はじめ皆様のご協力をお願いしたい。


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