貿易投資委員会 総合政策部会(部会長 團野廣一氏)/5月10日
総合政策部会では、民間産業界の立場から、わが国が自由貿易協定を推進していくうえでの課題について具体的な検討を行なっている。この一環として、早稲田大学の浦田秀次郎教授に自由貿易協定の経済効果などを中心に話をきいた。浦田教授は、日本ができるだけ多くの国と、すべての分野に関して自由貿易協定を推進することが経済的に望ましいと述べた。
地域統合は、1990年代に入って急増した。その理由は、第1は欧州共同体の深化と拡大に対抗し米州、アジア等で地域統合を模索する動きが強まったこと、第2はGATT/WTOによる多角的な自由化の進捗の遅れが地域レベルでの自由化に対するインセンティブになったこと、第3は発展途上国諸国による経済自由化の手段の一つとして地域統合が選択されたこと、等による。
特に最近の傾向として、経済の発展段階の異なる国同士の連携や異なる地域統合間の連携が進められていることが挙げられる。
大きな意義としては、
域内国に対してプラスの効果をもたらす経済効果としては、貿易創造効果、市場拡大効果、競争促進効果、域内の経済厚生向上効果等がある。他方、マイナスの効果をもたらすものとして貿易転換効果がある。これは、地域統合の結果、効率的な域外からの輸入を域内からの輸入に転換することで生じる効果である。自由貿易協定を経済学的に考えた場合、貿易転換効果をいかに最小化するかが、最も重要な問題である。
シュミレーションでは、日本が、対象分野を限定せず、なるべく多くの国と自由貿易協定を締結することが、日本および世界経済にとって最も望ましいという結果が出た。
短期的には、シンガポールなど日本と経済構造が比較的似た国と地域統合を進めていくという考えもあり得る。しかし長期的には、WTOとの整合性を確保しつつ、日本と産業構造が異なる国との協定も推進していくべきである。同時に、WTOやAPECによる多角的自由化も進めていくべきである。