経団連くりっぷ No.126 (2000年6月8日)

第23回日本カナダ経済人会議(日本側議長 奥田 碩氏)/5月15〜16日

日加経済関係の更なる拡大と多様化


日本カナダ経済委員会では、5月15〜16日にかけて経団連会館他で第23回日本カナダ経済人会議を開催した。15日の一般会議では、日加経済関係の拡大と多様化をテーマに意見交換を行ない、16日には、石炭、鉱産物、農水産・食品、自動車の4つの業種別分科会を開催するとともに、双方の情報通信、金融サービス関連企業関係者による意見交換の場を設けた。

  1. 第1セッション「日加経済関係の拡大・多様化に向けた課題」
  2. 経団連およびBCNI(Business Council on National Issues)で昨年秋より行なった (1)日加経済関係の拡大とハイテク分野等への多様化策、(2)日加間の自由貿易協定締結の可能性についての検討結果について、とりまとめにあたった財前日本側検討会座長、ならびにダキーノBCNI理事長より報告した。

    1. 日本側検討結果(財前三菱商事顧問)
      1. ハイテク分野に日加経済関係を拡大する方策:
        カナダのハイテク企業側の課題としては、

        1. 北米市場で成功しているからといって日本市場で必ずしも成功するわけではないこと、
        2. カナダのハイテク企業が提供できる製品・サービスに関する情報が日本の潜在的顧客の間で周知されていないこと、
        等が指摘される。これらを解決するために、カナダのハイテク企業と日本企業の間の仲介サービスを行なう対日貿易・投資機関を設立してはどうか。また、各種業界団体による業種別交流を定期的に行なうことや、インターネット上に日加のハイテク企業によるサイバー・モールを立ち上げることも一案である。

      2. 日加間の自由貿易協定の可能性
        自由貿易協定の一般的メリットとしては、

        1. 協定による域内の貿易・投資の拡大、
        2. 協定を結ぶことで締結国の産業界や国民の間で、双方に対する関心が高まること、
        などが指摘される。他方、日加間の自由貿易協定のメリットとしては、
        1. 二つの地理的に離れた地域をリンクすること、
        2. 先進国同士の協定として、今後わが国が他の先進国との間の自由貿易協定の可能性を検討する際のモデルとなり得ること、
        などが考えられる。
        他方、問題点としては、1999年で日本のカナダからの総輸入額の約6割を占める農林水産品についてWTOとの整合性を確保する観点から、どのように取扱うかがある。今回の検討を通じて、一部に解決すべき問題はあるものの、日加間の自由貿易協定は両国経済関係の活性化に寄与することが確認されたことから、今後は、経済界のみでなく、政府や有識者も交えてさらに検討を深めていくべきである。

    2. カナダ側検討結果(ダキーノBCNI理事長)
      1. ハイテク分野等に日加経済関係を拡大する方策:
        日本では、依然、カナダに関して資源や一次産品に依存する国という時代遅れのイメージが強いが、カナダ企業は、情報通信、マルチメディア、バイオ、コンピュータ・ソフト等の面で優れた技術を有している。日加経済関係を現在の両国の実態に沿った形で再活性化するためには、両国政府、経済界が協力して二国間の貿易・投資自由化に向けた具体的ステップを取ることが必要であり、そのための交渉の枠組み、自由化のスケジュールを策定すべきである。

      2. 日加間の自由貿易協定の可能性:
        両国間には、協定では解決できない文化、制度、慣行の違い等に根差した市場障壁が存在することや、協定に対する両国政府、経済界の関心がまだ熟していないことを考えると、まずは、両国間で段階的に貿易・投資の自由化交渉を進めることが現実的である。そうした過程を積み重ねていくことが、将来的には自由貿易協定へ繋がる。

  3. 第2セッション「新しい分野における日加貿易・投資関係の拡大に向けた課題」
  4. BCE(ベルカナダ・エンタープライズ)をはじめ、情報通信、コンピュータ等の分野でカナダを代表するハイテク企業代表から

    1. カナダではコンピュータ・システムのデザインに従事する労働者数は、農林水産、鉱業等に従事する労働者数と並んだこと、
    2. 情報通信分野のカナダGNPに占める割合は1997年で5.9%に達し、同分野の雇用の伸び率はカナダ平均の4倍に達していること、
    など情報通信分野が現在、カナダ経済の成長源であることが説明された。
    これに対して同分野の日本企業代表から、
    1. 日本でカナダのハイテク製品を販売するには仲介に立つコンサルタント、アドバイザーが必要であること、
    2. 製品・サービスのユーザー毎に売り込み戦略を立てる必要があること、
    などを指摘した。

  5. 第3セッション「WTO次期ラウンド交渉に向けた日加協力」
  6. 司会の渡邊経団連特別顧問より、日加両国がWTOの次期ラウンド交渉の立ち上げやサービス交渉においていかに協力するかについて問題提起があり、ウィークスAPCOグローバル・トレード・プラクティス会長(元駐ジュネーブ・カナダ大使)と楠川富士総合研究所特別顧問(経団連サービス貿易自由化協議会特別顧問)より以下のプレゼンテーションがあった。
    ウィークス元大使より、

    1. WTO次期交渉立ち上げに関して日加両国は、4極のメンバーとして米EU間の意見調整に重要な役割を果たせること、
    2. 1993年のAPECのシアトル閣僚会議がウルグアイ・ラウンドの成功に貢献したように、APECをWTO交渉推進の梃子に利用すべき、
    等の指摘があった。
    楠川顧問からは、
    1. わが国においても韓国、シンガポール等との自由貿易協定締結の可能性が議論されているが、二国間協定はあくまでもWTOの補完であって日本のマルチ重視の姿勢は変化していない、
    2. わが国産業界も「サービス貿易自由化協議会」を設立するなど新ラウンドにおける貿易・投資の自由化を強く求めていること、
    などの説明があった。

  7. 両議長総括
  8. 奥田議長、テリエ議長(カナディアン・ナショナル社長)より

    1. ハイテク分野での交流拡大には、業種間交流の強化や政府関係機関によるビジネス支援体制の整備が重要であること、
    2. 日加間の自由貿易協定については、今後、協定も視野に入れた具体的な自由化のアプローチについて、経済界、政府、学識経験者などで検討を継続すること、
    など、今回の会議の総括を述べ、今後とも、日加関係の拡大と多様化について、経団連とBCNIで検討を継続することで合意し、閉会した。


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