経団連くりっぷ No.126 (2000年6月8日)

「変化する企業と社会貢献」懇談会(座長 島田京子氏)/5月18日

「総合的な学習の時間」活用へのNPOからの提案


教育改革の一環として2002年度より「総合的な学習の時間」が導入されるが、NPO側からも、それぞれの専門分野を踏まえて同時間の活用に関する具体的なプログラムが提案されている。そこで、当懇談会では、シャプラニール=市民による海外協力の会の下澤嶽事務局長、芸術振興協会(APA)の堤康彦氏より説明をきくとともに、企業とNPOが連携して教育現場に貢献できる可能性について意見交換を行なった。

  1. シャプラニールからの開発教育の提案
  2. シャプラニール=市民による海外協力の会は、バングラデシュやネパールを中心に開発協力を行なうNGO(民間の海外協力団体)で、1972年の設立当初から自立支援のための識字学級や商品作物栽培支援などの活動を通じて、人々の生活向上に取り組んできた。しかし、現地の開発NPOが成長を遂げたことや国内支援者の自己実現の機会を求める声の高まりに対応して、活動の重点を国内での開発教育に移しつつある。
    シャプラニールは、南北問題、世界の貧困を活動現場の視点・経験から理解するとの立場で、手工芸品の展示・販売、ブックレットや学校教材づくり、疑似体験ワークショップなど、多様な開発教育活動を行なってきた。今年は、8月にバングラデシュの村を訪問し、村人の日常生活を観察するスタディツアーを予定している。
    ここ数年、開発教育や担い手としてのNGOに対する学校側の関心が高まっており、教師からの問い合わせや、修学旅行による事務局訪問が増えている。そこで、2000年度より、「総合的な学習の時間」に活用できる教材やソフト開発、教師を対象とした開発教育ツアー、地域在住支援者を講師として紹介する活動などに取り組んでいく。

  3. 芸術振興協会からのASIASの提案
  4. 文化芸術活動の基盤整備に必要な調査・研究を行なう芸術振興協会(APA)は1991年に発足した所員3名の小さなNPOで、子供たちの創造力や想像力を引き出し、表現能力やコミュニケーション能力を養うために芸術を切り口にしたASIAS(Artist's Studio in a School)プロジェクトを提案している。
    APAは、小学校の依頼に応じ、担当教師との打合わせ・協働により、ワークショップ型授業の講師となるプロの芸術家の派遣をコーディネートする。プロの芸術家とは、生涯を通じて自己の創作活動にいそしむことを決意し、それを継続して実行している人を指す。感性豊かなプロの芸術家と子どもたちの双方向のコミュニケーションを重視するワークショップ型授業を通じて、子どもたちに新たな価値観や物の見方を考えるきっかけをつくることができよう。このプロジェクトが、学校をひらき、地域が学校教育をサポートするモデルケースとなればと考えている。


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