経団連くりっぷ No.127 (2000年6月22日)

日本アルジェリア経済委員会(委員長 室伏 稔氏)/5月29日

経済の多様化が第1の課題

−ユースフィ・アルジェリア外務大臣と懇談


アルジェリア共和国のユースフィ外務大臣を迎え、最近のアルジェリアの政治・経済情勢等について説明をきいた。アルジェリアではブーテフリカ大統領の下、政情安定化を目指した政策が実施され、治安も回復しつつある。過去にソナトラック(石油・ガス公社)総裁を務めたユースフィ外相は、炭化水素(石油・ガス)以外の産業を発展させることが課題であると述べた。

  1. ユースフィ外相発言要旨
  2. 1999年にブーテフリカ大統領が就任して以来、国内に治安と安全が戻ってきている。テロの犠牲になった人々の生活環境を改善し、インフラを再建するため、国として復興に力を尽くしている。政治面では複数政党主義など高い理想を掲げ、民主主義国家として努力してきている。一方で、経済分野についても、あらゆる業界で改革を実行している。国営企業の民営化にも着手し、対外貿易を再開してWTOにも加盟した。これらの大改革により、1998年に9%だったインフレ率を1999年には4%に低下させ、経済成長率を5%上昇させることができた。そして外貨準備高も輸入に対して6〜8ヶ月確保している。
    しかし、失業率が30%という基本的な問題が残されており、とりわけ若年層や大卒者に失業者が多い。社会的な問題としてテロで破壊されたインフラ設備を再建する必要がある。国民の需要に応えるためには、今後10年間で8%の経済成長率を達成しなければならない。
    こういった背景を考えると、わが国において経済的に最も優先順位が高い課題は、経済の多様化である。炭化水素に係わる事業は独立しており、輸出の98%、国家収入の55%、GNPの3分の1を占めている。炭化水素の他にも、農業、工業、鉱山、観光業といった分野で高いポテンシャルが期待できる。わが国は資源に恵まれており、質の高い労働力、低い通貨レート、地理的優位性を有している。他の第三国に比べて、通信やエネルギーといったインフラ設備が整備されており、電気の普及率が95%、天然ガスも住居の3分の1に供給されている。
    海外から投資を受け入れる環境は整っており、法制度を改善する準備もある。日本の産業界にわが国の経済再建にご協力いただきたい。現時点で海外直接投資の筆頭はアメリカで、ヨーロッパも中小企業を中心に進出してきている。これからもっと多くの日本企業が、わが国産業の近代化に根本的な役割を果たしてくれると信じている。

  3. 質疑応答(要旨)
  4. 経団連側:
    炭化水素以外の産業分野について、特に日本企業に入ってきてほしいという分野があれば教えてほしい。

    ユースフィ外相:
    炭化水素関連の分野でも、建設業、鋼管、パイプライン敷設などに有望な事業があり、サービス部門や土木分野などにも参加頂きたい。他にも肥料(農業)、天然ガス、リン、石油化学、鉄鋼、繊維、セメント、家電、車(四輪・二輪)、エンジン、医薬品などさまざまな分野がある。

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